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彩―隠し事

秘密 

会員制クラブで被虐の悦びに目覚めた優子はショーの終了後、
「彩さん、どうされますか??席に戻ってお酒やショーを楽しみますか??あるいは、、このままお帰りになって余韻に浸るのも結構な事だと思います」
「このまま帰ります。気持ちの整理をしないと明日の仕事に影響しちゃいそうなので・・・おいくらですか、ここで精算させてください」
「いえ、今日は私どもから彩さんにお支払いいたします。彩さんのショーに感動されたお客様から複数のチップが届いています・・・この中に入っています」

そのまま通用口から外に出て最寄りの駅まで送ってもらい、電車の中で封筒を確かめると予想を超える金額が入っていた。
帰宅後すぐにバスタブに湯を張り身体を沈めると乳房の上下にはっきりと分かる縄の痕が残り、手首にもよく見るとそれと分かる痕がある。
元々、バスタイムが好きな優子が時間をかけて血行を促すと手首のそれは気にならない程度に薄くなり気持ちが軽くなる。
乳房に残る縄模様は、恥ずかしい姿を見知らぬ人に見られたいという思いを成就し、優子自身が気付かぬうちに温めていた、縛られたいという思い、自由を奪われる中で感じる心の開放に酔った証として愛おしくさえ思える。

ベッドに横たわって眠ろうとすればするほど目が冴える。
明日は重要な仕事はなかったはず。それが気を楽にしてくれる。
こんな時にも仕事を気にする生真面目さが我ながら可笑しくて苦笑いが浮かぶ。
胸に手を伸ばすと指先が縄の痕を感じると同時にクラブで彩を見つめていた男の顔が蘇る。
ショーツ一枚だけを身につけて縄で拘束される身体を見ることなく、彩の視線に絡みついたまま心の中を犯されるような思いが沸き上がり、組み敷かれて慰み者にされる妄想が沸々と育っていた。
どこの誰とも分からない相手では二度と会うことはないだろう。いや、クラブに行けば会えるかもしれない。
そんな事を考えると手は自然と股間に伸びて蠢き、早々に出来た泥濘がクチュクチュと卑猥な音を立てる。
クラブでは長い間、心の奥に秘めていた隠し事をあからさまにされたものの、身体は生殺しのような状態でモヤモヤしていたが指が与えてくれる快感でスッキリ眠ることが出来た。

夢の中でカヲルが囁く。もう一度縛られると心だけでなく、身体も快感で震えて満足できるようになるわよ。
名前も住まいも知らない、あの男も囁く。彩の心の奥には自分でも気付いていないアヤカシが棲みついている。アヤカシは彩を官能の世界に引きずり込む魔性のケモノ。


「優子、どうしたの??一仕事終わるたびにため息をついて優子らしくないよ」
「えっ、ごめん。いつもと同じ積りだけど、違って見える??」
睡眠不足気味なのは気にならないものの、身体の芯に残るモヤモヤした思いが仲の好い同僚には奇異に映るらしい。
あなたの教えてくれた秘密クラブで縛られてきたんだよ、と告げるとどんな反応をするだろうと思うものの問いかけには笑みで誤魔化すしかない。

「久しぶりに飲みに行こうか、優子なら浮気相手なんてすぐに見つかるよ。協力しようか??」
「結構よ、浮気相手は自分で見つけられるもん」
「やっぱり、今日の優子は変。自分から浮気をするって宣言するなんて何があったの??旦那とは付かず離れずのままでしょう??」
居酒屋では浮気願望を追求されることなく、一言、優子があんな事を言うからびっくりしちゃった、の後はいつもの通り他愛のない話で盛り上がった。

仲の良い友人と美味い酒と食事を楽しんだ翌日から妄想を振り払い、仕事と趣味に集中したものの二度目の週末を迎えようという金曜日、自分の気持ちを持て余すほどイライラが高じるのを意識する。
跡形もなく消え去った縄模様を思い出して指を這わせると縄が身体に食い込む感触が蘇り、縄に抱かれる心地良さを思い出した身体が疼く。
今日、再び秘密クラブを訪れると縛られるか否かにかかわらず、SM行為から抜け出せなくなるような予感がする。
縛られたい、恥ずかしい姿を見知らぬ人に見られたい。
身体の芯から沸き上がる疼きをどう処理しようかと真剣に悩む。

夫は金曜の今日から日曜まで接待ゴルフで留守にすると言い置いて出勤した。浮気相手と遊びに行くのが接待なのと言いたくなるのを飲み込んで、じゃぁ、久しぶりに実家に行ってこようかなと言うと、よろしく言っといてと安心したようだった。

仕事の場では女性であることを意識しないようにパンツスーツで通してきたが、今日はスカートスーツを引っ張り出して身につける。
グレーのスーツに黒いトップスを合わせて清潔感を失うことなく、女性らしいエレガントさの中に遊び心を付け加える。
スカートの中はガーターベルトで留めたストッキングだけでショーツを穿いていない。
ひざ丈のタイトスカートはただならぬ緊張感を伴い、ハイヒールが包む踵から頭の先端まで姿勢を意識する。
出勤途中で前を歩くスカート姿の女性を見て、この人の穿く下着なんて見えるはずがないと思うと自分のノーパン姿も自ら宣言しないと分かるはずがないと気が楽になり、羞恥心と共に育つスリルが萎んで少しがっかりする。

同僚たちは異口同音に、どうしたの、女を前面に出して。週末を利用してご主人とどこかへ遊びに行くんでしょうと言う。
ご想像にお任せしますと答えたものの、終業後、どうしようかと思って仕事が手につかない。
仲のいい友人は、「まさか本気で浮気するんじゃないよね。優子は真面目に考える質だから止めた方がいいよ」と真剣に心配してくれる。
ガーターベルトで留めたストッキングだけで下着は穿いてないんだよと言ったら、どんな顔をするだろう。
エッチな秘密を持つことがこんなに昂奮するなんて、身体が熱い。

急な仕事が入って残業を終えた時には課長と二人きりになっていた。
「いつも申し訳ないね。私が課長の職を全うできるのは鍬田君のお陰だよ」と嬉しい言葉をかけてくれる。
「片付けなきゃいけない事が残っているし、ご主人に申し訳ないから誘うのは止めとくよ」
紳士然とした言葉を物足りなく思いながら、下着を穿いていないから課長がその気ならここでエッチ出来ますよと言いたくなるのを我慢して、
「都合の良い時にお昼をごちそうしてください」と声をかけると、こぼれんばかりの笑みを浮かべて、「いい店を知っているから近いうちに誘うよ。その時は鍬田君の友人も一緒にね」と誤解を招かないように気遣ってくれる。

退出して時計を見るとすでに21時を過ぎ、隙間風が吹いているとはいえ夫がいない家への帰宅を焦る事もないので近くの店で夕食を済ませると22時。
通勤で利用する電車に乗り込む。

意識しないまま引き寄せられるように秘密クラブのある駅で下車してしまった優子は、今更ながら駅頭に立ってどうしようかと悩む。
クラブへの道は戻り道のない一方通行のように思えて足がすくむ。
下着を穿いていないひざ丈のタイトスカートにも慣れて、身体だけではなく気持ちも大胆になっている優子は、夫は今頃、不倫相手と楽しんでいるのだろうと思うと帰路に就くのも癪で駅前のホテルにあるバーに行くことにする。

彩―隠し事

欲望

エレベーターに乗りバーのある最上階のボタンを押すと同時に、失礼と一言、挨拶して男が乗り込んでくる。
「あっ・・・」、「ごめんなさい、お邪魔だったですか」、「いえ、そんな事はありません」
秘密クラブで縛られた彩の心を犯すが如くに凝視した男に違いない。
間違えるはずがない。ステージから見た顔、ベッドで思い出した顔。間違いない。
この人は気付いているかしらと不安と期待でドクドクと全身の血が逆巻き、頬が朱に染まるのを意識する。

行き先階ボタンを押そうと手を伸ばしかけた男は、目的のボタンが押されているのを確かめて所在無げに手をブラブラさせて優子を見つめる。
「逃げようのないこの空間で失礼だと思うのですが、時間がそんなに残されていないので聞いてください・・・バーにお付き合いいただけませんか??」
「えっ・・・あの」、シュッ~、ガタン・・・エレベーターは目的フロアに着いてドアが開く。
「どなたかと待ち合わせですか??」
「いいえ、ご一緒させていただけますか??」
「ありがとうございます。ここから見る夜景は独りじゃ寂しいですからね」
秘密クラブで縛られていた女が目の前にいるのに気付いた様子がなく、優子はがっかりすると同時に安堵する。
並んで歩く男の横顔はスッキリと整い、秘密クラブで見た男だと確信する。
表情に出さないようにと思いながらも動悸が激しくなるのを避けることが出来ず、無意識のうちに握りしめた手はじっとりと汗ばむ。

「今日はカウンターじゃなく窓際の席にしてください」と男は常連客然として声をかけ、眩いばかりに宝石を散りばめたような夜景が見える席に案内される。
「よく来るんですか??」
「独り住まいの無聊を慰めるのに酒を飲みたいときはここに来ます。近いからって理由ですがね」
「お近くにお住まいなんですか、羨ましい・・・この素晴らしい夜景は独りじゃつまらないですか??」
「そういうわけじゃないのですが、独りの時はカウンターです。夜景はカップルのためにあると思っているので・・・今日は、ありがとうございます。久しぶりに夜景を堪能できます」
同年代と思える男性の振舞や言葉遣いに不自然さはなく、秘密クラブで見た女だと気付いている気配は全く感じられない。

「自己紹介が遅れました。私は健志、健康の健に志と書いてタケシと読みます」
「私は彩。彩りのアヤです」、本名ではなく、クラブに登録した名を名乗る。
「彩さんですか。名は体を表す、雰囲気にぴったりのお名前です。スーツが良く似合って凛として嫋やか、彩さんのような女性と同席させてくれた神様に感謝します」
夜景を楽しみカクテルを味わいながらの時間は会話も弾んで、下着を穿いていないどころか、久しぶりのスカート姿という事も忘れるほど心地良い。
ラストオーダーの時刻だと告げられて、このまま別れるのが寂しいという思いが沸き上がる。
彩が最後のスプモーニを飲み干したタイミングで健志が、
「ご自宅は近くですか??・・・他意はありません、こんな時間ですから帰りの足をどうするのか気になったものですから」
「主人は出張で留守なので、このホテルに部屋を取ろうかなぁ・・・」
健志の問いに答えると言うでもなく、思いついたことをつい口にした。
「ご主人に断らなくてもよろしいのですか??」
「いいの・・・出張だと言っているけど、本当は不倫相手と旅行でもしてるんでしょう・・・」
カクテルが与えてくれた少しの酔いと健志に好意を抱き始めた優子は言わずもがなの言葉を口にする。
優子の言葉に一瞬反応しかけた健志だったが、
「楽しい時間でしたが営業時間を終えたようです。出ましょうか」と言う健志の言葉に、一押しされれば何処へでもついていくのにと軽い失望を感じつつ、頷いて席を立つ。
今日は課長と言い、健志と言い紳士然とした男ばかりでつまらない、優子ではなく彩は奔放な女なのにと叫びたくなる。

シュゥ~・・・エレベーターのドアが閉まり下降が始まると優子の前で背を向けて立っていた健志が振り返り、
「店を替えますか、それとも私の家で飲み直しますか??」
「えっ、それ以外の選択は・・・例えばタクシーで帰宅するとか・・・」
「どうしてもと仰るならお引止めすることはできませんね。そのときは諦めます」
トンッ、シュゥ~・・・返事をする間もなくエレベーターのドアが開き、気持ちをエレベーター内に残したまま彩はエレベーターホールに立つ。
「タクシー乗り場までお送りします」
「・・・タクシーに一緒に乗ってくださいますか??」
「ウフフッ、結構ですよ。私が運転手さんに告げる住所は一つしか知らないのですが、よろしいですね・・・」

健志に促されて乗ったタクシーは、それほど遠くない高台に建つマンションに着き、ドキドキする鼓動に胸を締め付けられるような気持ちで後に続く。
どうぞ・・・ドアを開けた健志は一歩退き、彩を自室に招き入れようとする。
「えっ、えぇ・・・はい」一歩踏み出せば健志の部屋に入るという最後の一歩を躊躇する。
・・・・・急かすでもなく、イライラするでもなく泰然と立つ健志の表情に安心して部屋に入ると、カーテンを開け放った窓にはホテルのバーで見た宝石箱をひっくり返したような景色ではなく、たくさんの人たちの生活の証である家々の灯りが見えて心が落ち着く。
「ホテルで見た景色も華やかでいいけど、私はこの景色が好きだな・・・それより、お腹が空いてないですか??」
「少し・・・」
肉の塊を取り出してテーブルに置き、彩に向かって、
「肉を常温に戻す間、スパークリングワインにしますか、それともお風呂がいいですか??」
「えっ・・・いいえ、このまま待ちます」

お泊りセットを用意していないどころか、ショーツを着けていない事を思い出して愕然とする。
このまま帰ろうか、それでは失礼になるだろうか。
スカートを脱ぐことはできない。ガーターベルトに留めたストッキングとノーパン姿、浅ましく男をあさっている女と思われないだろうか・・・易々と男の部屋についてくるんじゃなかったと悔やむ気持ちになる。

彩―隠し事

色欲 

高台に建つマンションの窓際に立つと先ほどまで酒を楽しんだホテルの威容を中心にこの街のほとんどを見渡せる。
25時を過ぎても睡魔は姿を見せることなく、一つまた一つと家の灯りが消えていくのを楽しむ余裕が生まれてくる。

ジュゥ~・・・肉をグリルパンで焼き始める音がする。
「彩さん、焼き方はどうしますか??」
「今日は生々しい女の気分なのでレアでお願いします」
「彩さんが生々しい女ですか、意外ですね」
時間の経過とともに健志に対する警戒心が薄れ、清楚で淑やかと他人が評価する優子は姿を消して、優子の心の奥でゆっくりと育っていた妖しい魅力を湛えた彩が身体を支配する。
窓際から健志のそばに移動して肉に付いた縞模様を見つめる。
健志はそんな彩の腰に手を回して引き寄せ、一言も発することなく唇を合わせる。
「うっ、急に・・・レアじゃなくミディアムに変更して・・・だから、もう一度」
潤んだ瞳で見上げる彩を左手で抱きしめて再び唇を合わせた健志は唾液を送り込み、右手は何かを探るようにスカート越しに腰を擦る。
「ミディアムレアにしときましょう」
「ハァハァッ・・・久しぶりのキスで昂奮する」

グリルパンで焼き目を付けたテンダーロインをアルミホイルで包んでオーブンに入れた健志は振り返り、
「彩さんは私に見覚えがあるのでしょう、違いますか??私も気付いていましたよ。駅にいたのですが彩さんが降り立った時にすぐに分かりました。後をつけてエレベーターに乗り込み、彩さんの目的が客室フロアじゃないので誘いました」
「そうだったのですか・・・それで私をどうしようと思っているのですか、念のため聞かせていただけますか??」
「警戒しないでください。秘密を知ったからといって脅そうなどと思っていません・・・そうだなぁ、ご主人が浮気をされていると仰いましたが、彩さんにもその気があるなら私にそのチャンスを与えてくれませんか??」
ほとんどの人がイメージする清楚で上品な人妻優子ではなく、今は奔放で淫らな彩に変身しているので健志の言葉に欲情を昂じさせる。
「そんな事を言われても・・・浮気します、抱いてくださいなんて言えません」
二人の仲は卑猥な空気を漂わせながら着実に近づいているのに言葉遣いは一気に間を詰めることがなく、ゲームのように楽しむ余裕が生まれている。

「上着をいつまでも着ていないで脱いでリラックスした方がいいでしょう・・・それとも、すぐに帰るので脱ぐ必要はないという意思表示ですか?・」
声は穏やかながら有無を言わせぬ雰囲気に二人だけのプレイの一環と受け取った彩は、嫌がる様子もなく上着を脱いでその場に立ち尽くす。
「スカートハンガーを用意したから脱ぎなさい」
「いじわる・・・彩を苛めて楽しいですか??」
優子を忘れて彩になり切り、先ほどまで私と称していたのが奔放な彩になるべく自分を彩と呼び始めるものの、逃げるように後ろに下がるばかりでスカートに触れることがない。

ドンッ・・・あっ・・・背後の椅子にぶつかった彩は、そのまま腰を下ろして座り込んでしまう。
「そうですか、疲れましたか。椅子に座った方が楽でしょう・・・ステーキは私が口に運んであげますよ」
「ほんとう??彩はここに座って口を開けるだけでいいの??」
「そうですよ。彩さんは動く必要がないから・・・こうしましょう」
彩の足をひじ掛けに乗せて大股開きで座らせる。
「動くのは許しませんよ。動くようなら、申し訳ないけど素っ裸に剥いて両手の自由を奪って、この格好で足も縛ります・・・分かりましたか??」
「ハァハァッ、だめっ、苦しい・・・」
黒いシャツにグレーのタイトスカート姿で両足をひじ掛けに乗せて大股開きの彩は、足の付け根まで覗かれないかと不安と期待で動悸が激しくなる。

「タイトスカートがずり上がってストッキングが守るムッチリの太腿が美味そうでそそられます・・・」
「ハァハァッ、彩は太腿じゃなく肉の匂いにそそられます」
「あっ、忘れていました。肉が焼けていますね」
オーブンから出してアルミホイルを外した肉は湯気と共に美味そうな匂いが鼻を刺激する。
「ワインは白で我慢してもらいますよ。よく冷えた白が好きで肉でも魚でも白なので・・・」
冷えたワインで肉を流し込むように食べ終えた二人は、妖しい光を宿した視線を絡ませて口を閉ざす。

「彩さん、そのままの格好でスカートを脱ぎなさい」
「いやっ、スカートは脱げない。許して・・・チンチンを舐めろと言われればオシャブリします。抱くと言うならベッドに行きます。ここでスカートを脱ぐのだけは許してください」
スカートの中に下着を着けていないのを知られるのは、オシャブリする事や身体を開いて股間の奥深くに健志を迎え入れるよりも恥ずかしい。
仕事中も浅ましく男あさりをしている女だと思われるのは堪えられない。

「ノーパンなのは知っていますよ。今更恥ずかしがることはないでしょう・・・脱ぎなさい」
「えっ、知ってたの??」
「彩さんは意識してないつもりでも不自然さはありありと感じていたよ。スカート越しに腰を撫でても何の気配もなかったしね。タイトスカートに浮かぶ下着のラインを気にするならTバックで済むけど、その気配も指先は感じなかった」
椅子に座ったままスカートを脱ぎ始めた彩に背を向けた健志は食品用ラップフィルムを用意する。
スカートを脱ぎ終えた彩はひじ掛けから降ろした足を揃えて行儀良く座り、それを見た健志はチッチッと舌打ちをして顎をしゃくる。

再び肘掛けに乗せた足をラップフィルムで拘束して股間をあからさまに晒す。
羞恥で頬を朱に染めて顔をそむけるさまが色っぽく、ガーターベルトとストッキングが飾る下半身はムッチリとして染み一つない。
健志は股間に伸ばしたくなる手を我慢し、じっと見つめて意地の悪い事を言う。
「彩さん、身体の関係がない私が言うのも変だけど、秘密クラブで縛られたり仕事中にガーターベルトとノーパン姿。ご主人の浮気を切っ掛けにして何か性的な欲望が胸の内で育ち始めて持て余しているんじゃないか??・・・もしもそうなら、もしも卑猥な欲求を幾らかでも解放しようとしているなら私が協力するよ。見知らぬ男に抱かれることも、複数の男に弄ばれる場も提供する。見られるか見られないかの露出を楽しんだり・・・そうだな、女性が相手の機会も作るけど、どうだろう??」
私は彩、奔放で淫らな女にあこがれる気持ちが育ちつつある。

彩―隠し事

秘密の取引 

抱かれる前の健志にそんな事を言われても返事のしようがないと思うものの、一度でも健志の胸で喘ぎ声を漏らすようなことがあれば淫蕩な誘いを拒否する事はできないだろうと思う。
夫を愛し、愛されていると思っていた優子は誰からも清楚で上品な奥様と言われ、生来の性格もあって浮気することなどありえないと思っていた。
その夫が浮気していると確信した時、高校時代に隣家の男子に着替える姿を覗き見られて昂奮した記憶がよみがえり、友人が教えてくれた秘密クラブのSMショーで縛られて優子さえも気付かぬ内に心の奥底で密かに隠れていた淫らで奔放な彩がはっきりと姿を現した。
優子が制止しても、彩の浮気への好奇心を止めることはできないだろうと思う。
それどころか優子の想像も及ばない奔放さを見せるに違いない。
ジキル博士とハイド氏のように優子と彩の間を彷徨いながら不誠実な夫を言い訳にして、健志と過ごす時間は奔放で淫らな女になるだろうと想像すると胸は早鐘を打つ。

言葉を口にすることなく、視線を絡ませることもなく健志は股間を見つめる。
儚げな飾り毛は大切なところを隠そうとする意志を感じさせず、くすみの薄い割れ目と早くも滲み出た花蜜は健志の視線を引き付けて止むことがない。
「イヤッ、そんなに見つめられるのは慣れてないから恥ずかしい」
「そんな事を言われても、彩の陰毛は大切な処を守ろうとか隠そうとする積りがないようだから、見るのが礼儀だろう」
「恥毛が薄いからって、そんな言われ方をするのは・・・意地悪な男は嫌いじゃないけど・・・」
「仕事帰りに酒を飲もうとしている好い女を誘ったら、パンツも穿かずにガーターベルトとストッキングだけ、私じゃなくても気になると思うよ」
「そんな、たまたまです。いつも、こんな恰好で出勤するわけじゃないです・・・足を自由にしてください。そんな事を言われるのは堪えられない」
両足を大股開きで拘束され、隠すものもなく曝した股間に自由な両手を伸ばして隠そうとする。
「彩さん、そんな事をすると素っ裸に剥いて両手両足を万歳の格好で縛りつけるよ。両手をどけなさい」
「そんな事を・・・こんな恥ずかしい恰好を曝したまま見つめられるのは、無理やり押さえつけられて犯されるより恥ずかしい」
「そうですか、無理やり犯されるのは一時の辱めを堪えれば済むし身体に残る痕跡は洗い流せばきれいになる。隠しようのない恥部を見られるのはドキドキして羞恥心がとどまることなく成長する・・・だから嫌と言うわけですか??」
「それが全てじゃないですが・・・正直に言うと、秘密クラブで見知らぬ人たちの前で下着だけを残した緊縛姿を見られた時、遠い昔の忘れていた記憶が蘇ってゾクゾクするような快感に包まれて心地良かったの」

「彩さんはご主人と別れようという気はないのでしょう??」
「浮気されたことは腹が立つけど、それを除けば今でも嫌いじゃないし、食器を壊すように結婚生活も投げつけてしまえば簡単に粉々になると思うけど、少し時間をかけて考えようと思っています」
「私は結婚した事がないので分かりませんし、無責任な言い方かもしれませんがそれが正しいのでしょうね・・・大人の男と女、割り切った付き合いも出来るんじゃないですか??」
「正直に言います。彩は本名じゃないんです。秘密クラブで登録名をどうしますかって聞かれたときに思いついた名前なのです。そんな私でもいいのですか??」

健志に好感を抱き、この人となら一時のアバンチュールに耽る事も悪くないと思う優子は仮名を名乗ったことを詰られることを覚悟して話す。
「好いじゃないですか。私は独身です、彩さんの方がリスクを背負うこともあるでしょう。どこの誰とも明かさないことが安心につながるとすれば私になんの異存もないですし、私の知るあなたは彩と言う名です」
「明日はどうなるか分からないけど、今日は健志の言うことに従います・・・彩の何処が好きになったのか教えて、夫に裏切られた彩に自信を取り戻させて欲しいの」

「秘密クラブで縛られた彩を見たオレは理想の女性に巡り合えたと思った」
これまで、彩さんと呼んでいたのが彩になり、私がオレとなったことで二人の仲が一気に縮まり抱かれることが当然だと彩は思う。
「本当なの??お世辞でも嬉しいけど、健志の理想の女性と彩がどれほど似ているのか教えて欲しい」
「艶のある黒髪と悪戯心を宿した瞳は私の好みのど真ん中だし、意志の強さを宿す顎のラインもいい。上半身や身体のラインはスポーツに興じて自己規制が効いていると感じさせる。オッパイを見せてもらってないけど、ウェストの括れからバンと張り出した腰から太腿に続くムッチリとしたラインが好きだよ」
「あぁ~ン、もっと聞かせて。仕事で褒められることはあっても女としての自信を失いかけていたの」
肘掛けに足を乗せて拘束しているから腿の裏側が見える。触れようとする手を弾き返すほどの弾力に生命力を感じるし、誰でも一つだけ秘密を持つ権利があるとも言う。
秘密を持ちすぎるのは誠実さが足りない。一つだけ秘密を持つと、それが自分の負い目になって他人に優しく接することが出来る。
清楚で上品な人妻の彩が奔放で淫らな女になる時間を持ち淫らな享楽に耽る秘密を持つと、浮気を許す事はなくとも今よりもご主人に優しくなれるはず。
それは、いずれ二人の仲が元に戻ることに通じると思うよと健志にとって都合の良い言を弄する。

「健志にとって都合の良い言い分のように聞こえるけど彩にとっても悪い話じゃなさそう。長い間、彩自身も意識しないままに棲みついていた淫らな享楽に耽る奔放で淫らな女。そんな彩を開放させてくれるんでしょう??本当の私、私を知る人たちが清楚で上品な人妻と褒めてくれる本物は傷つけずに・・・そうでしょう??」
「あぁ、そうだよ。オレが知るのは彩だけで本物の正体は知らない方がいい。本物はこれまで通り過ごせばいい」
「もう一つわがままを聞いてくれる??今日は抱いて欲しいの・・・明日以降は彩に考える時間を与えて欲しい。本当の私はこれまで通り仕事をして夫との関係について、健志の言うことを信じて考えてみる。奔放な彩が今日だけではなく今後も健志に抱かれたがっているか確かめたいの・・・わがままで身勝手な言い分だってことを承知しているけど健志だからお願いするの・・・」
「・・・・・分かった。彩の判断に任せる、どんな結論を出してもオレは彩の味方だよ」
「ありがとう・・・もしかすると、同じ空の下に住んで二度と会うこともないかもしれないけど、それでも健志は彩を見守ってくれる。健志ともっと早く会いたかった・・・脱がせて、オッパイも見て欲しい。彩の身体で遊んで欲しいの、変態遊びで彩の獣欲を満足させて欲しいの」

彩―隠し事

暗闇    

黒いシャツを脱がせてガーターベルトとストッキングだけの姿にした彩の両足を食品ラップフィルムでひじ掛けに拘束し、同じようにして背後で両手の自由を奪った健志は窓用シャッターを下ろし、部屋の灯りをすべて消してしまう。

「どうして、怖い・・・健志がこんな事をすると思わなかった。ドキドキして心臓が破裂しちゃいそう・・・」
真っ暗闇に彩の震え声だけがむなしく響く。
「ねぇ、何とか言って。怖いの・・・何も見えないし、動くことも出来ない」
彩の言葉が途切れると一瞬が永遠に続くかと思うほどの静寂が部屋を覆う。
「ハァハァッ・・・イヤッ、だめ・・・これまで愛撫と言えば指や舌でされるものと思っていたけど、秘密クラブで恥ずかしい姿を見られて視線による愛撫がある事を知って昂奮したの」
「性的快感は触覚や視覚のように何かを感じて芽生えるだけじゃない。刺激を何も与えられなくても想像で昂奮することもできる。誰もが持っているものじゃなく、想像力や感覚の豊かな人が有する快感だと思うよ」
「ハァハァッ、だめっ・・・健志が新たな悦びを教えてくれた。何も触れずに何も見ることなく音も聞こえず、何もしない愛撫でアソコが濡れちゃう。ドキドキする胸が破裂しそうなほど昂奮するし、健志のチンチンが押し入る瞬間を想像して狂っちゃいそうになる。彩が昂奮しているのが分かる??ねぇ、彩の昂奮を感じてくれている??」
「伝わるよ、彩の息遣いだけじゃなく鼓動も伝わる。眼を閉じると彩の胸でドクドクと全身に血を送る心臓の動きを感じることが出来るよ」
「すごい、彩のすべてが健志のモノ。彩は健志の思い通りに操られるの・・・幸せ、こんな快感は初めて」

ハァハァッ・・・キュキュッ、ギシギシッ・・・荒い息遣いと共に自由を取り戻そうとしてラップフィルムが擦れる音と椅子のきしむ音が真っ暗闇で不気味な音を立てる。
永遠に続くかと思う暗闇が卑猥な気配を湛えて彩の身体にまとわりつき、わずかな変化を感じ取ろうとして感覚が鋭敏になる。
裸足の健志がわずかに移動しても彩は気付くはずもなく、首筋に吹きかけられた息に、ヒィッと悲鳴を上げる。
「イヤッ、今のは健志でしょう??何か言って、お願い・・・心臓が破裂しそうなほどドキドキする」

影すらできない真っ暗闇とは言え恐怖と不安で悲鳴を漏らし、息を荒げる彩の位置は健志には手に取るように分かる。
「ヒィッ~、なに、何??健志なの??健志でしょう??」
伸ばした指先が彩の肩を突くと悲鳴を上げて椅子を倒さんばかりに暴れて、すぐに静かになる。
静かになると言っても身体の動きが止まっただけで息遣いは一層荒くなり、閉じることも出来なくなった口からハァハァッ、ゼェゼェと苦し気な息が漏れる。

健志の指は暗闇でも見えているかのように無駄なく動き、肩から背中を撫でて首筋を刷いていく。
「ウググッ、クゥッ~・・・いやっ、怖いのにゾワゾワする。怖いのか気持ちいいのか分からない・・・アウッ、いやぁ~ん。変な感じ・・・」
健志の両手が耳を弄り、二つの穴に侵入した乾いた指が優しく蠢くとその刺激が得体のしれない音となって脳を騒めかす。
健志の指が撫でたり突いたりする刺激や耳を弄られ、首筋や髪の生え際を刷くように指が這い、息を吹きかけられると不安を表していた声が艶めかしい喘ぎ声に変化して椅子の軋み音さえ色っぽく聞こえ始める。
健志の指の動きが止まった刹那、「アンッ、だめっ」と艶めいた声を漏らす。
「どうした??」
「えっ、うん・・・どうもしない」
「正直に言わないと、いつまでもこのままだよ。朝になってもシャッターを下ろしたまま、お腹が空いてもこのまま。オシッコしたいと言ってもトイレに行かせないよ・・・正直に言いなさい」
「・・・・・笑わないでね。アソコがジュンとなって蜜が滲んだみたいなの。恥ずかしい」
「恥ずかしい事なんかないよ。彩は感度がいい証拠だし、真っ暗闇のスリルが性感も敏感にしたんだろう・・・滴る蜜を見せてもらうよ」
「いやっ、恥ずかしい。暗闇のままだと怖いし不安。灯りを点けて欲しいの、お願い・・・だめ??」

健志は返事をせずに何やらゴソゴソと探し始めたようで、その音が彩の不安を大きくする。
「ヒィッ~、なに??いや、恥ずかしい」
ペンライトの灯りが彩の股間を照らし、割れ目に滲む蜜がキラキラと虹のような輝きを放つ。
「ほう、彩の言う通りだ。スケベなマンコが嬉し涙を滲ませてキラキラ光っているよ。この輝きを彩に見せてあげられないのが残念だよ」
「恥ずかしい。真っ暗闇にアソコだけが浮き上がって見えるんでしょう??彩の存在がスケベそのもののようで恥ずかしい・・・ハァハァッ」
「恥ずかしがる彩の顔を見せてもらおうか」
股間を照らした灯りが恥丘から下腹部を経て臍を照らし、胸の膨らみの全容を見せつけて首を明るく染め、羞恥で顰めた顔を照らし出す。
「アンッ、眩しい・・・やめて、そんなに照らされると眼が・・・」
「医療用ペンライトだから大丈夫だと思うけど・・・やめようか」

再び部屋は闇に戻る。
サワサワ、サワサワ・・・「ヒッ、なに??健志なの??それとも、虫??」
棒の先についた羽毛が闇の中で彩の身体を這いまわり、繊細な動きにくすぐったいと思ったのは一瞬の事で、羽毛に逆なでされると身体中の産毛を起こされて毛穴が開くような得も言われぬ快感が湧いてくる。
「ハァッ~、なに、どうしたの??・・・彩の身体は変、おかしくなっちゃう」
優子の身体の奥に隠れていた卑猥な思いの正体が彩となり、サワサワ、ザワザワと刺激する羽毛が正体の源泉を解放しようとする。
文字通りのフェザータッチによる快感は心を解し、性的な刺激に敏感になった身体は健志に十分な満足を与えられないと納得しないだろうと思い知る。

サワサワ・・・アンッ、イヤッ・・・ギシギシッ・・・羽毛は左足の内腿を這いまわり、鼠径部や割れ目に沿って上下し彩の股間は滴る蜜が甘い芳香を放ち
暗闇でもはっきり分かるほど欲望を露わにする。
左腿から右腿に移動した羽毛は一層繊細な動きとなって彩をじわじわと快感の頂上に追い込んでいく。
「アッ、アッ、クゥッ~、たまんない・・・正体の分からないフワフワしたモノに嬲られて気持ちよくなるなんて・・・アワワッ、くぅっ~、もっとぉ」
間断なく響く喘ぎ声を聴いて暗闇で目を細める健志が操る羽毛は、胸の膨らみを頂上に向かって蛇行しながら上っていく。
サワサワ・・・「いいっ、たまんない。気持ちいぃ」、ギシギシッ・・・
真っ暗でも這いまわる羽毛につながる棒を通じて彩の存在を知り、可愛い喘ぎ声が彩の悦びの深さを教えてくれる。椅子の軋み音が彩をもっと気持ちよくさせてあげなさいと催促する。