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偽者 ~PRETENDER~ -18

偽り 

約束の前日に佐緒里から確認の連絡があり、改めて身勝手なお願いを承知で明日はお願いしますと言う。
予定に変更がないので先日話し合った段取りで細かいところはお任せします。
それはそうと、美香ちゃんを抱いたでしょ??
あの日以来、美香ちゃんは明らかに変わったと言い、妹分と思っている美香ちゃんが自信に満ちた接客で売り上げを伸ばしているのは嬉しいけどねと皮肉を込めた言い方をする。

美香ちゃんを抱いてあげてと佐緒里から言われたにせよ一日で姉妹どんぶりを済ませ、仕掛けられたとはいえ翌朝も美香を抱いた好色さを思い出して我がことながら苦笑いが浮かぶ。
佐緒里の恋人役を演じ、縁談を勧めるご両親を諦めさせるということを気軽に引き受けたことが良かったのか、今になって色々と思い悩む。

当日朝、美香から連絡があり、先日は色々とお世話になりました。
次に会う日を楽しみにしています。プライベートデートを期待しないわけじゃありませんが、ご来店される日をお待ちしています。
今回は、お世話になっているさおりさんとは言え、ご無理なお願いをして申し訳ありません。
美香や佐緒里との関係がこれからどうなるのか分からない。
店でキャストと客として会うだけになるのか、プライベートな付き合いが継続するのか全く分からないし、積極的に動かず流れのままに付き合いが継続出来ればそれでよし、ダメなときは潔く諦める積りでいる。
佐緒里は美香に知られず三人の関係を望むかもしれないが、美香が継続を望むときは二人だけと思っているだろうし佐緒里ともセックスしたと知ると、どのような反応するのか見当もつかない。

準備のために有楽町に出向き、東京交通会館にある各地のアンテナショップの中から大阪百貨店で大阪土産を買い帰宅後シャワーで汗を流す・
真面目で実直に見えるようにネイビースーツに淡いブルーのシャツを選択し。堅苦しくならないようにダークブラウンの無地ネクタイを合わせる。
鏡の前で、よし、と呟いた内藤は時刻を確認して玄関に向かう。


佐緒里の部屋では予定通りに到着した両親と互いの近況を話し、世間話をしながら親子水入らずの時間を過ごしていたものの、わずかに緊張感が漂う。
両親は改めて佐緒里の部屋で見合いを勧める切っ掛けを求めてバッグに忍ばせた写真を意識し、佐緒里は内藤の到着を待ちながら見合い話を持ち出されないように時間稼ぎをする。

ピンポ~イ……「あれっ、誰だろう??ちょっと待っていてね」
顔を見合わせる両親を残して佐緒里は玄関に向かう。
「どちら様ですか??」
「内藤です。出勤前で忙しいと思うけど、出張のお土産を持ってきたんだよ」
「ほんとう??ありがとう」……「どうぞ」
「忙しいときにゴメンね。あれっ、お客様がいるの??……これはお土産、じゃぁ帰るね」
「両親が来ているの。紹介するから、入って……急ぐ用があるならしょうがないけど」
「特に用はないけど、邪魔しちゃ悪いから帰るよ」
ほぼ打ち合わせ通りに猿芝居をする佐緒里と客の様子を見るために玄関に来た父親が、
「どうぞ、お上がりください。私たちに遠慮することはありませんよ」
「こんにちは。お父様ですか??それでは遠慮なく上がらせていただきます」

佐緒里の紹介を交えながら自己紹介した四人はテーブルを挟んで早々に打ち解けた。
両親は佐緒里と内藤の節度を守った中に感じる親しさに安堵して持参した写真の存在を忘れ、内藤は役割を果たせそうな雰囲気に安心し、そんな三人を見る佐緒里はこれが現実ならいいのにと思う。

内藤の大阪出張土産の豚まんを四人で食べながら、
「どう、これ美味しいでしょう??内藤さんは大阪出張のたびに必ずこの、551蓬莱の豚まんを買ってきてくれるの」
始めて食べる豚まんをいつも食べていると言いながら、今はまだ結婚を考えられないの、ごめんねと両親に心の中で詫びる。

時計を見た内藤が、
「これで失礼します。親子水入らずの貴重な時間に加えていただき佐緒里さんのご両親と楽しい時間を過ごせたことにお礼を申し上げます。ありがとうございました」
「いえ、私たちこそ、お礼を言います。水商売という世間の時間の進み方とは違う場所で働く娘を心配していましたが安心しました。内藤さん、これからも佐緒里の事をよろしくお願いします」
話し終えた父親に合わせるように母親も笑みを絶やさず首を垂れる。

両親の様子に佐緒里の頼み事は無事、成し遂げられたようだと思いながら、娘を心配する両親に申し訳ないと思わずにいられない。
しょうがない、佐緒里の幸せは両親の持ち込む積りの話の中だけにあるわけじゃない、何より佐緒里が望んでいない事だからオレは悪い事をしたわけじゃないと自らを慰める。


翌日、店で席に着くと早々に美香は、
「さおりさんが喜んでいたよ。ご両親が、もう結婚云々は口にしないって言ったらしいの……それって、ご両親が内藤さんの事を気に入ったって言うことでしょう??ねぇ、そうでしょう??何があったの??」
「さおりさんと打ち合わせた通りで特別な事は何もないよ。クククッ、それより、水割りを作ってくんないかなぁ」
「あっ、ごめんなさい。直ぐに作ります」

「内藤さん、いらっしゃいませ。座ってもよろしいですか??」
「どうぞ。好いよね、美香ちゃん??」
「もちろんです、おねがいします」
席に着く一連の動作は美香が見ても優美で無駄がなく、ナンバークラスともなると容姿や話術だけではない魅力を備えていると感心する。
「昨日はありがとうございました。両親は何も言わずに私に任せるとだけ……美香ちゃん、ありがとう。美香ちゃんのお客様に変なお願いをして、ごめんね」
「そんな、私のお客さまだなんて……よかったですね」
「お礼を兼ねて二人に手料理をご馳走したいのだけど、どうかしら??差支えがなければ早速だけど明日、私の部屋に来てくれませんか??」
内藤と美香は顔を見合わせ、言葉は口にせずに頷いて、お伺いしますと声を合わせる。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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