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親友の妻

動揺

滝と久しぶりに食事をした時の事だった。
「今日は俺が払うよ」
「お客様、このカードはお間違いかと思いますが……」
「うんっ、あっ、ごめん間違えた」
オレに顔を向けたまま財布からカードを抜き出した滝は間違いに気付き、気まずそうに直接ポケットに納めクレジットカードを差し出した。
店を出てから問わず語りに滝は話し始めた。
「気付いたか??ラブホの会員カードだ。仕事で何かとサポートをしてくれる女性が居るんだけど……お礼代わりに食事に行ったり飲みにいったりするうちに……お前と違って、真面目にやって来たから免疫がなくてな」
「オレには説教する資格はないが、可愛い奥さんを泣かせるような事はするなよ」
「判ってる、俺にとって一番大切なのは誰かという事はな……判ってるよ」
先週、金曜日の出来事だった。

「土曜日にスーツをクリーニングに出そうと思ってポケットの中身を取り出したらカードが……せめて、財布に入れておいてくれたら気がつかなかったのに……」
「…………」
オレは言葉もなく彼女の口元を見つめ、出てくる言葉にどう対応しようかと思い悩んでいた。
「そのカードは……隣の部屋においてあるんです。見ていただけますか??」
オレの返事も聞かずに彼女は立ち上がろうとする。
ガラステーブルのため立ち上がろうとした彼女の部屋着の奥が、天板越しにチラッと見えてしまった。
パイル地でピンクのミニ丈の奥に、扇情的とも言える真っ赤なショーツが見えた。
白くむっちりとした腿の奥のそれは、あまりに刺激的で欲情を抑えるため、オレは宙を睨み大きく息を吐く。

「ここにあるの、入って……」
ウッ……口に溜まった唾液を飲み、早鐘を打つ心臓の異変を気付かれないよう平静を装いながら、彼女の引いたドアから室内に入る。
淡いピンクのカバーを掛けたベッドが目に入った。ピンクとブルー、色違いの枕カバーが二つ並んでいる様子に唾を飲み込み舌で唇を湿らせる。ナイトテーブルには旅先で撮ったのであろうツーショット写真が飾られ、その隣にあるティッシュペーパーにドキッとしてしまう。

「今、出すわね」
入り口に立ち尽くすオレの傍を通り抜ける彼女の腕が触れる。成熟した女性の柔らかな感触に下半身が反応しそうになる。
窓の外の爽やかな風景のような、清々しいウッディ系の香りが卑猥な思いから開放してくれる。

「これなの……主人を信じていたのに……」
テーブルの引き出しから取り出した一枚のカードを、オレに見えるようにそっと置く。
「…………」
彼女は立ったまま、小さく肩を震わせて両手で顔を覆う。
オレは肩を震わせる友人の妻に慰めの言葉を掛けることもできず、ラブホの会員カードを見つめる。
手に取ろうとした瞬間、カードを床に落としてしまった。
オレと彼女は同時にしゃがみ、カードに伸ばした手が触れる。
「あっ、ごめんなさい」
「ごめんっ」
体温を感じるくらい間近で見る彼女は頬を紅潮させ、先ほどまでの自信無げな様子は影を潜め、朱に染まってはいるもののキラキラ光る瞳に淫蕩さを宿す。

一瞬交差した視線を不自然に逸らせ、再び手を伸ばす。
彼女の手が伸びるのを見たオレは手を引き視線を上げる。
ざっくりとした部屋着の胸元から覗く白い胸の谷間にオレの心臓は早鐘を打ち、口元を緩め瞳に淫蕩さを宿したままの彼女の視線がオレを見つめる。
自分を取り戻せないまま焦るオレは視線を落とす。
ミニ丈のルームウェアはしゃがんだために、白くむっちりとした腿のほとんどを露出させ、赤いショーツの影を意識させるほどずり上がっている。

不自然にフラフラと立ち上がったオレは背を向け窓外に目をやり、
「緑がきれいですね。この向こうは多摩川ですか??」
訳の分からない言葉を吐き、やっとの思いで平静を取り戻す。
「ウフフッ、フフッ……」
突然の笑い声に驚いたオレは振り返り、しゃがんだまま、裾の乱れも気にせず笑顔を見せる彼女に怪訝な顔を向ける。
「ごめんなさい……アハハッ、だって……可笑しいんだもん」
「可笑しいですか……ハハハッ、可笑しいですね。ごめんっ」
「この部屋じゃお困りのようですから、向こうへ行きましょうか。お茶を淹れます」

オレは紅茶、彼女はコーヒーを飲みながら暫らくの間、滝の浮気話を忘れ世間話で時を過ごす。笑顔を浮かべるようになった彼女は突然、話題を戻し、
「久しぶりに笑いました。カードを発見して数日ですけど、それ以前から今思うと色々あった事を思い出して土曜からは笑うことも忘れていました」
「ごめんね、相談されながら……」
「私に魅力があるってことですよね??それでドキドキするんでしょう??」
先ほどまでの視線を落とした自信無げな態度と違い、垂れた前髪に指に絡ませて上目遣いの媚を含んだような視線にオレは平静でいられない。
無言のオレに構わず彼女は言葉を続ける。
「最近の彼の様子に変だなぁとは思っていたの……帰りの遅い日に限ってお土産があったり、休日に出掛けたり……私の話に上の空だったり、妙に優しかったり……そして、あのカードが……」
「分かった。直接話してみようか??」
「柏木さんなら、ぐずぐず言わずにそう言うと思った。彼には、それが一番いいと思う。柏木さんの言うことなら素直に聞いてくれると思うし、思い上がりかも分からないけど、私の元に帰ってくれると思うの……だけど……」

だけど、と言葉を切り、続きを話さない彼女に不審な思いを抱いたオレは、
「私も彼の助言に何度助けられたことか……それに、彼が貴女にどれほど惚れているかを知ってるから、駆け引きなしでストレートに話したほうが良いと思うよ」
「うん、お願いします。私も彼を愛しているから別れたくない……もう一つお願いが……」
呼び方が、いつの間にか主人から彼になった事に気が付いた。

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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