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彩―隠し事

キス      

「どうだった、驚いただろう??手を伸ばせば届く範囲に何人も人がいる場所で見せるセックスをするのは」
「はい、驚きました。それよりも、喘ぎ声というか悲鳴というかあの声は外に聞こえる心配はないのですか??」
「それは大丈夫って分かっているから、このスタジオへ来たんだよ。元の持ち主がピアノの練習をしても大丈夫なように、窓も二重だし防音は完全だからね」
「元の持ち主って??引っ越しされて貸しスタジオにしてるんですか??」
「いや、そこんとこは色々あって、訳アリなんだよ。訳アリのスタジオって案外と多いんだ。霊感の強い女優だと何も言ってないのに妖気が漂うとか何か変な感じがするとかね……夢がなくなるから、この話はオシマイ」
満足できる仕事を終えた監督は雄弁で、友人の昔の知り合いの男に飲物を持ってきてくれないかと言いつけて、時刻を気にしながら後片付けの様子を見て優子たちの相手をしてくれる。

「監督、片付けが終わりました」
「よしっ、撤収だ……俺たちは集合場所までバスで戻るけど、君たちはこの近くに住んでいるんだろ??これは、俺の個人名刺。スカウトはともかく、また見学したいとか何か用があればいつでも連絡してくれていいよ。それじゃぁ」
くどい事を言わず、台風が通り過ぎるようにあっという間に部屋を出る。
友人が昔付き合っていたという男は名残惜しそうに手を握り、
「浮気したくなったら俺の事を思い出せよ。色んなセックスを見て当時よりも上手になったからな、ヒィヒィ、啼かせてやるよ、元気でな……優子さん、AVに出る気になったら俺に連絡ください。条件やら何やら力になります、忘れないでください」
「えっ、そんな事を言われても、その気になりませんから。申し訳ございません」
「そうだよ、失礼だよ。そんなだから、私も別れることにしたんだからね」
「そうか、ゴメン。連絡してくれて嬉しかったよ、それじゃぁ」

「このまま帰る??それとも、身体の火照りを冷ますために飲みに行く??」
「今日は帰る。明日は朝一で会議があるから、その準備もしなきゃいけないし」
「ウフフッ、あんなのを見ても優子は優子、昂奮したはずなのに冷静さを忘れない。やっぱり、優子は浮気なんて絶対に出来ないね。セックスへの好奇心はないわけじゃないし、小柄だけどムッチリの身体は抱き心地が良さそうだし、勿体ない。そうだ、監督も男好きする身体だって言ってたよね」
「もう、怒るよ……ウフフッ、いいの。私は亭主に浮気されても健気に堪える女。いつか私を幸せの国に連れ去ってくれる男が現れる……なぁ~んてね」
「うん、優子なら、その気になれば男なんて掃いて捨てるほど集まるよ……ねぇ、キスしていい??」
通り過ぎる人たちを気にすることなく優子をショーウィンドーに押し付けるようにして抱きしめ、女性らしく柔らかな唇を重ねて舌を侵入させる。
ウグッ、ジュルジュルッ……フグフグッ、プファッ~……
「ウフフッ、怒らないでね……優子が好き。じゃぁね、私はタクシーで帰る」

通りでキスをする女二人に興味津々で視線を送る人込みに一人残された優子は、羞恥で顔を上げることも出来ずに俯いたまま小走りで駅に向かう。
「ウフフッ、あんな所でキスされちゃった。いつか二人で温泉宿に行きたいって言っていたけど……二人きりになれば、どうなるんだろう??」
電車の窓ガラスに映る自分を見ていると、卑猥な思いを抑えることが出来ずに股間が熱くなるのを意識する。

健志にAV撮影を見学してきたと言えば何と言うだろうかと思わずにいられない。
AV女優さんの在籍するお店もキャバクラなど幾つかあるらしいから会ったことがあるかもしれない。でも実際に撮影を間近で見た事はないだろう、羨ましがるだろうか……そんな事を想像すると、自然と口元が緩む。
そんな優子を見て一人の男が優しく微笑む。
ゴホンッ、大袈裟に空咳をして奥歯を噛み締め、緩んだ口元を元に戻して軽く会釈をする。
シュゥッ~、シュゥ~……電車が駅に滑り込むと前に立っていた男が、失礼と言葉を残して降りていく。

自宅が見える場所になっても部屋は真っ暗で夫が帰宅している様子がなくて安堵する。
私の帰宅が遅くなると連絡したから浮気相手と遊んでいるのだろうかと思っても、以前のように気持ちが騒めくこともなく、明日の準備と次はいつ健志に連絡しようかと考えると自然と気持ちが高揚する。

「あなた、浮気相手とお泊りしてもいいよ。私は優しいの、黙って許してあげる」
友人に連れられて行ったSMショークラブや今日のAV撮影見学を思い出し、健志と過ごす時間に思いをはせながら嫌味な言葉を無人の部屋で吐き出す。
翌日の準備も終わり、大好きなバスタイムを早めに切り上げてベッドに入ったタイミングで夫の帰宅を知らせるドアの開閉音が聞こえたけれど、気付かぬ振りでオナニーもせずに目を閉じる。

「おはよう。昨晩は優子の帰りが遅くなるって連絡もらったから残業に熱を入れ過ぎたよ、ごめん。用意しといてくれたお茶と和菓子を食べてゆっくり寝ることが出来た。忙しいだろうに、ありがとう」
「いいわよ、私は遊びであなたは仕事。謝られるとかえって恐縮しちゃう」
「優しいな、優子は。申し訳ないけど、先に言っとくね。決まったわけじゃないけど金曜から出張が入るかもしれないんだ。出張と言っても接待ゴルフなんだけど、断れないしさ」
「最近、出張が多いようだけど大変だね。気にしないで良いよ、私も仕事をしているからよくわかる……私に出張はないけどね」
「ごめんね、決まったら直ぐに言うよ」

夫を見送った優子は、浮気相手がわがままを言うようになったのか、それとも夫が女に溺れているのか分からないけど、健志の存在があるから外泊が多くなってもイライラする事はなく、出張という言葉が心地良く響く。
健志と過ごす時間を思うと、今日も出張だと言われても腹が立たないのにとさえ思う自分に苦笑いを浮かべる。
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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