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彩―隠し事 20

新たな刺激    

昨日の朝は不快に感じた満員電車の揺れも今日は楽しむことが出来る。
身体の向きを工夫して膝に余裕を持たせると電車の揺れに無理に抗うことなく立つことが出来るし、ヨガと同じように身体を鍛えているような気もして得した気持ちになる。
あれはいつの事だったろう??
離れた場所だったのではっきり見たわけではないが、足を踏まれた、踏まないのと些細な言い争いが殴り合いの喧嘩になって電車が大幅に遅れたことがある。
そんなにストレスを溜めて今日の仕事に差し支えないのだろうかと、その場に相応しくない事を考えるほど仕事が楽しく好きだったし、今もそれは変わらない。
周囲の人たちの表情をさりげなく見ると、ほとんどの人が表情を消して不快な時間をやり過ごそうと苦心しているように思える。電車が揺れると、その表情は一様に不快なものに変わり、ごめんなさいと小さな声で謝る人や、チッと舌打ちする人もいる。

えっ、なに??この手はおかしい……
電車の揺れに合わせて自然な風を装ってお尻に触れた手の甲が左右に蠢く。
手の平で触ればアウト、手の甲ならセーフ、今でもこんな都市伝説のような迷信を信じるバカな男なの??それとも、清楚で淑やかに見えるらしい私なら痴漢行為をしても騒がないと思っているの??
久しぶりに使ってみようかな……安全ピン。私は淑やかだけじゃないのよ。
「痛いっ……」
「あっ、ごめんなさい。洋服に安全ピンが付いていたみたい。大丈夫ですか??……大変、血が出てる。次の駅で降りて駅員さんに治療してもらいましょうよ、本当にごめんなさい」
「いえっ、大丈夫です。僕が悪いんです、大丈夫、心配しないでください。ごめんなさい。ほんとに、ごめんなさい」
駅で停車した電車のドアが開くと同時に男は顔を伏せるようにして降りてしまった。
クククッ、あれじゃ痴漢していましたと宣言したようなもんじゃない。

痴漢にあった時、恥ずかしいからと黙って耐える、手が触れているけど痴漢じゃない満員電車だからしょうがないとあきらめる、窓の外を見たり車内のあちこちに視線を巡らせて気を紛らすなどと反応を幾つかに分けられるけど、優子は高校時代から黙って耐えるということはできず、安全ピンを撃退用の武器として用意していた。
安全ピンを持っていることも忘れるほど過去の記憶になっていたが、今日は久しぶりに痴漢の対象になった。
彩となって健志と卑猥な遊びに興じたせいで痴漢を呼び寄せるほど色っぽくなったのかと思うと腹が立たない。

「おはよう。今日の優子はやる気満々のようだね、元気を少し分けて欲しいよ。昨晩は旦那に抱かれてやったんだけど、久しぶりだったせいか、しつこくて参っちゃった。寝不足なの、化粧のノリも悪いし最悪……たまには抱かせてやんなきゃダメね。そうだ、今日、時間ある??面白い処へ行こうよ」
言いたい事を言い終えた友人は、優子の返事も確かめずにスキップでもしそうなほど軽やかに自席に着き、あっけに取られる優子に、定時に帰れるようにするんだよと告げてウィンクする。

昨夜の準備の甲斐もあり支障なく仕事を終えた優子は、友人と共に退社する。
「優子、旦那に帰りが遅くなると連絡しといた方がいいよ」
夫も知っている友人と食事をするから帰宅が遅くなると連絡して、秘密クラブのある盛り場の方向に歩き始める。
「ねぇ、いつかのSMショークラブじゃないよね??」
「うん??あの店は優子に刺激が強すぎた??今日はね昔の男の仕事現場を見せて欲しいって言ってあったんだけど、今日、お前の住んでる町の近くが現場だから見たければ来いよって連絡が来たの。一人じゃ怖いから優子を誘ったってわけ」
「ふ~ン、私の知らない世界をたくさん知ってるよね」
「遊びだと優子の先生になれるかもしれないけど、仕事は敵わない。優子は私の憧れだよ、優子といると本当に楽しい。いつかの約束を覚えてる??」
「二人で温泉に行こうって話でしょう??忘れるわけがないし、旦那には時期は決まっていないけどって話してあるよ」
「そうなんだ、楽しみ……露天風呂付の部屋にしようね。優子と二人で風呂に入ってオッパイを揉みっこするの……いやだっ、想像すると濡れちゃう」
行き交う人たちを気にする風もなく大仰に股間を抑えて嬌声を上げても、夜の盛り場では特に目立つこともなく他人の視線を気にすることもない。

盛り場を通り過ぎて住宅街に差し掛かってもキャッキャッ騒いでじゃれ合うと、さすがにすれ違う人たちの中には顔を顰める人もいるけれど友人は気にする様子もない。
電柱の住所表示に視線をとめた友人は、
「着いたようよ、このマンションかな??」と、自分に言い聞かせてスマホを取り出す。
「迎えに来てくれるって」
優子に告げると友人は宙を睨んで目を閉じ、フゥッ~と息を吐いて両手で軽く頬を叩く。
「ねぇ、なんなの??面白い事ってなに??変な事をされるのは嫌だよ」
優子が不安に満ちた声をかけたタイミングで、迎えに降りてきた男が、
「こっちだよ、早く。もうすぐ始まるからね、何しろ時間との勝負だから急いで」
優子は不安に苛まれながらも何事が始まるのかを聞かされることなくエレベーターに乗る。
「挨拶は時間がないから省略で良いよね。一つだけ気を付けてね、声を出さないように……さぁ着いたよ」
エレベーターを降りると、何の変哲もない廊下を目的の部屋に向かって歩く。
「あのね、優子、今から行くのはAVの撮影現場、ここに貸しスタジオがあって撮影するんだって……そうだよね??」
「そうだよ、時間貸しのスタジオだから時間内に終了しなきゃいけないんだ。この部屋だよ、静かにね」

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ちっち

Author:ちっち
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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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