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彩―隠し事

健志    

彩がオナニーに耽っている頃、帰宅した健志はシャワーで彩との楽しい記憶を一旦洗い流し、証券会社のPC用トレーディングツールを開く。
機械メーカーの務めを辞した後、生活の糧を得る手段としている日経平均先物取引をするためだ。
個別企業の株式を売買するのではなく、ニュースなどで日経平均株価はいくらですと言っている株価指数に連動する商品の売買でハイリスクハイリターンの典型のような商品であり、取引時間は8時45分から15時15分まで、休みを挟んで16時30分から翌朝5時30分までの2回、合わせて19時間30分あるのでリスク管理さえ怠らなければこれほど便利で面白いモノはない。
グローバル経済と言われる中、日本だけではなく米国を中心に世界各地の政治経済ニュースや各国経済指標を読み解きながらトレードするのは知的好奇心を刺激されてトレードのための準備そのものも楽しい。

早々に目標金額を得た健志は、欲は敵と自分に言い聞かせ、自分だけのデータを取得するために必要事項をエクセルシートに入力して重要と思える事柄をトレードノートにメモしてベッドに入る。
以前付き合った女性に、あなたの寝つきの良さはそばにいて腹が立つといわれたほどで、彩との記憶を蘇らせることなく直ぐに夢の中の住人になる。

気持ちの好い朝を迎えた健志はシリアルやハムエッグ、チーズと生野菜などを用意して牛乳をたっぷり注いだミルクティで朝食を済ませる。
料理は嫌いじゃないので自分で準備することは苦にならない。
メニューから材料を揃える、あるいは食材を確かめてメニューを決める。
どちらからのアプローチも健志の好奇心を刺激する作業で嫌いではない。
それは部屋の掃除にしても同様で段取りを考えるだけでも楽しく、一人で暮らすことを嫌だと思った事はない。

食事を終えた健志は昨日穿いていたズボンのポケットから出してテーブルに置いあった彩の下着を見つめ、誰もいないのに洩れそうになる笑みを必死に我慢する。
クククッ……ついに我慢も限界に達し、それでも大笑いすることは避けて苦笑いを浮かべる。
ステーキハウスのレストルームで下着を脱ぐ彩がどんな表情だったのか想像するだけで笑みが浮かぶし、眼下に見るこの街の夜景をバックに裸体を曝した美しさを鮮明に思い出すことが出来る。
ウェストなど要所要所は艶めかしい括れを持ち、成熟した女性らしくムッチリとした身体は見るだけで欲情をそそられる。
健志は彫刻刀で掘り出したようなモデル体型の美しさよりも生命力と色気を感じさせてくれる彩の身体に魅力を感じるし抱きたいと思う。

この部屋で彩を抱いた時の感触が蘇る。
仰向けに寝たオレを跨いで奥深くまでを飲み込んだ彩が肩と下腹部を上下させるほどの荒い息で覆いかぶさり、髪が胸をくすぐった時の感触が切ない思い出となって蘇る。
対面座位でつながると目の前にツンと上を向いたオッパイの持ち主である彩が羞恥と快感で朱に染めた表情で見つめ、愛おしさで胸がいっぱいになったオレは乳房を掬うように手を添え、くすみがなく可憐にさえ見える乳輪に舌を這わせて先端を口に含み、コロコロ転がして甘噛みをした。
彩は精一杯身体を寄せてオレの背中に回した手に力を籠め、胸の膨らみを押し付けるようにして肩に顔を埋めて洩れそうになる喘ぎ声を堪えていた。

彩の身体は彩そのもの、これまでの人生が現れている。
肩を中心にして上半身の発達は海や水泳好きを感じさせるし、身体全体のバランスのとれたムッチリ感と括れは自制心と節制を想像させて益々好ましい。
顔の化粧は言うに及ばず、乳房や太もも、膝などはケアする事を忘れない女性も、よく言われる首の周辺や背中、肘なども彩は注意を怠っていないと感じ取れるし、立ち姿を後ろから見た時の凛とした美しさは神々しささえ感じさせる。

彩の魅力を思い出すと人並みに絵を描くことが出来ればいいのにと思う。
スマホを使えば見たままの彩を残すことが出来るけれど健志はそれを好まない。
彩の姿を見たままではなく感じたままの美しさを残したいと思うが、それには絵を描くのが相応しいと思うし、心のキャンパスには鮮明に描き切っている。
現実のキャンパスに表現する術を持たない不甲斐なさを今ほど残念に思う事はない。
以前、付き合った女性の部屋でついうたた寝をしたオレを描いた絵を見せられたことがある。ほんの少しデフォルメしたその絵は、彼女の目にオレはこんな風に映っているのかと感動したことがある。

「さて、これをどうするか……」
真剣な面持ちで言葉にした健志はニヤッと笑みを浮かべて立ち上がり、使わないままになっていた額を取り出す。
額装したショーツとブラジャーは匂い立つばかりに彩の魅力を感じさせ、これを見た時、笑って許してくれるか目が点になるほど怒るか、それを想像するのさえが楽しい。
壁には掛けず、机の上で此処がいいか、それともこっちかなと場所を移動しながら居場所を探しして最後はPCのそばに立てる。


おなじ頃、夫を送り出した彩はパンツスーツの身支度を済ませて就寝前に揃えた資料を確認していた。
よしっ、昨夜の健志との淫らな行為の記憶を追い払い、自らを鼓舞するために声を出して彩から優子に変身し、エレベーターホールに向かう。
「おはようございます」
「おはよう。鍬田さんちはいつも仲が良くて羨ましいよ。ご主人を玄関で見送っていただろう??私がそんな事をしてもらったのは、いつだったのか思い出せないよ」
エントランスまで愚痴を聞かされた優子は、他人には仲が良いと思わせる私は大した悪女かもしれないと微笑み、真っ青な空を見上げて伸びをする。
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