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お伽話

心花 -17

前夜に続き二度目のセックスで満足した典哉はシャワーで汗を流してゴクゴクと音を立ててスポーツドリンクを飲み干し、出掛ける準備をする心花の後ろ姿を見つめる。
「もう少しだから・・・」
鏡の中の心花は微笑みで典哉を魅了する。
ショートボブの髪は快活な上品さを醸し出し、黒目と白目のコントラストがくっきりして聡明さを感じさせる心花に見つめられる典哉は視線を逸らせて青空を見て、落ち着けと自らに呟く。
初対面の時は如何にも仕事に疲れた風だった心花も今は一切の憂いを浮かべず、清潔感のある香りが鼻をくすぐる。
「どうしたの??珍しいモノを見るような目をして・・・」
「ミカはシャワーでエッチな気持ちも洗い流して清潔感のある女性に変身したなぁと感心するよ」
「あぁ、その言い方は傷つくなぁ。エッチな女は嫌いってことなの??私を好きって言ったのはウソなの??
「そんな事は言ってないだろ。昼間は淑女で二人きりの夜は娼婦、オレにとっては理想の女性だな・・・拗ねた振りも可愛いよ」
「ウフフッ、許す」

準備を終えた心花は右手を差し出し、その手を握る典哉に導かれるように近付いて唇を合わせる。
「ウフフッ、フミヤのキスが大好き」
ゆったりとしたシルエットでブラウンのオフタートルニットワンピースに包まれた心花は、初対面の時のテーラードスーツを身に着けていかにも出来る女といった様子を感じさせる事は無く、優雅さの中にミニ丈のためセクシーな雰囲気も残す。
「どうしたの、値踏みされてるような気がするけど」
自信に満ちた言葉は、変身ぶりを見つめるだけだった典哉を正気に戻す。
「きれいだよ。何かをする度にミカには驚かされる」
「女は化けるんだよ。知ってるでしょう・・・お腹空いた、行こうよ」

徒歩で5分ほどのカフェを目指してペディストリアンデッキを歩くと頭上をモノレールが走り、デッキの下をバスや乗用車が規則正しく一方向に走っている。
平日の出勤時と逆に駅へ向かう午前中の景色に新鮮さを感じて四方を見回す心花はいかにも楽しそうに歩き、握った手に伝わる感触で典哉の頬が自然と緩む。
「会って困る人はいないの??」
「私は大丈夫、何も困らないよ。フミヤはどうなの??」
「オレも困る事は何もないよ。困らないどころか、ミカのような好い女と歩いてるのを誇らしく思うよ」
「クククッ、嬉しい事を言うね・・・どんなご褒美を上げようかな??」
わざとらしく覗き込む心花に好色な雰囲気を感じ、視線を前方に向けて急ぎ足になる。
「あぁ、照れてる・・・もっと、ゆっくり歩いてよ」

フレンチトースト・ハムチーズと卵セットを二つと心花は小松菜やクレソンのスムージー、典哉は黒糖ミルクティをオーダーする。
明るく清潔な店内は、これから出かけようとするカップルや家族、買い物や映画を目的とする人たち、ウインズや競輪場へ行こうとする人などで席は埋まり、ガラス越しに見る通りにも土曜日を楽しむ人たちがいる。
フワフワのフレンチトーストを幸せな気分で食べた心花は右手に持ったマグカップを左手で支え、オフタートルに顔を埋めようとするかのように首をすくめてスムージーを飲む。
通りを歩く人たちを見つめる瞳は優しさに満ち、典哉と時間や空間を共有する事に満足する様子が見て取れる。
マグカップを離した唇は緑色の液体が付き、笑みを浮かべた典哉は指を伸ばして拭い取り、そのまま口に運んで舐め取ってしまう。
ありがとう、と言った心花はプレートのハムに視線を移し、気付いた典哉はフォークで刺して手を伸ばす。
「おいしい・・・朝は家でしっかり食べてくるし、昼食には遠いし夕食には物足りない。気になってた店だったけど来ることができた。ウフフッ、幸せ」
「お腹は満足したけど、これからどうしようか??」
「買い物をしたい。一泊分のお泊りセットは用意してたけど二晩も私を抱きたいと思ってるなんて・・・昨日の下着は洗ったけど、エロイ私を見たくない??」
秘めやかな声で囁く心花を抱きしめたくなるのを我慢してミルクティを飲み干し、
「オレに選ばせてくれる??」
「スケベ、いいよ、フミヤのエッチ度が分かるね」

数分歩いてランジェリーショップに入り、心花の耳元で任せてくれるねと言った典哉は店員に声をかける。
「肌が白いし雰囲気から赤が映えると思うんだけど、ハンケツ・・・Tバックの方が好いな。ベビードールも欲しい・・・決まったら教えてくれる。あれこれ見ると鼻血が出そうだからボゥッ~としてるよ」
「選ぶのを任せてくれるかって聞かなかった??」
「ミカが選ぶか、オレの指名した人が決めるかを任せてくれるか聞いたんだよ。この店にあるすべての商品を知ってる上に、色々なお客様に接しているからミカに似合うランジェリーを選ぶのは誰が一番か・・・分るだろう??」
「上手く騙されたような気がするけど分かったよ、店員さんに任せる。最後は決めてくれる??」
「それも止めとこう。最終的にミカが決めたベビードール姿を見るのが楽しみだよ、それを奪わないでくれるね」
「クククッ、スケベ・・・それじゃ、おねがいします」
「承知しました。私の知識のすべてとありったけのセンスでランジェリー選びのお手伝いさせていただきます」
早速、サイズを測り始めた二人に背を向けて通りを歩く人からも見えない位置で静かに佇む。

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