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M 囚われて

囚われて-12

駅の方角に歩く老夫婦を見送った二人は、ペデストリアンデッキの端に立ってデッキを歩く人や下の通りを歩く人たちに視線を走らせる。
閉店まで一時間余りのデパートに入る人、手をつないだカップルは、映画の上映開始時刻を気にしながらシネマシティを目指して小走りになっている。
JR駅を出てモノレール北口駅を目指す人、その逆にJRを目指しながら時刻を気にするのは中央本線の特急に乗ろうとしているのだろうか。
連休初日をのんびり過ごす人もいれば、目的をもって急ぐ人もいる。

男の右手が詩織の左手に添えられる。
決して握ることなく、手の甲に添えたままの男に業を煮やした詩織は強く握り、これで、あなたと私は繋がった、と言って男の顔を覗き込む。
男は握り返しながら、
「私の視線の中のどの女性よりも魅力的だよ・・・ただ、残念なのは、誰よりもエッチな事」
「どうして??・・・エッチな女は嫌いなの??」
「スケベな女性を嫌いな男はいないよ・・・昼間は淑女、夜は娼婦のようにでも良いし、昼間は娼婦で夜は淑女、これはこれで男の理想だけど、詩織は昼間も夜も娼婦のようにだろ。私には手強すぎる相手だよ」
「えっ??私のことはともかく、昼は娼婦で夜は淑女ってどういう事??」
「人妻の不倫・・・昼間、亭主の目を盗んで娼婦のように快楽を貪って、夜は亭主を相手に淑女のように健気な妻を演じる・・・あそこを歩く夫婦。知らぬは亭主ばかりなり、幸せそうな顔をしているけど、奥さんの仮面を剥いだら・・・恐ろしい」
「クククッ・・・言われてみると、どのご主人も可哀そうに見えてくる。女はしたたかだからね・・・キャァ~」

突然、風が吹き上げ、詩織は自由になる右手でワンピースの裾を抑えて艶めかしい声を出す。
「いやぁ~ン・・・ウフフッ、風がエッチ」
内股になって膝を閉じ、腰を引いて裾を押さえたもののタイトなデザインのため捲り上がる事もなく、叫び声を上げたことを恥じるように風のせいにする。
タイトなデザインのワンピースは、弾力を感じさせる胸の盛り上がりから深く括れたウエストを経て、悩ましい量感の腰から腿へとつながり、立っているだけでも男たちの視線を引き寄せていたのが、風の悪戯で色っぽい仕種をしたために立ち止まる男まで出現する。
詩織は通り過ぎる人たちに背を向けて、下を歩く人を見るような振りをしながら男に囁く。
「帰ろうよ・・・恥ずかしい。下着を着けてないのを感付かれないか不安・・・」

すれ違う人に下着を着けていない事が分かるはずがないと思っても、不安が消えることはない。
不思議なのは、その不安が決して嫌な感じではなく、身体の火照りさえ感じ始めている事だ。
勃起した乳房の先端がワンピースに擦れると動悸が激しくなり、股間に新たな滑りを感じる。
「帰るのはいいけど、夕食はどうする??・・・何か食べて行こうか??」
「うん、簡単に食べられるのが良い・・・ドキドキが止まらないの、とにかく恥ずかしいし不安」
「そのドキドキが、快感に変身するんだろう・・・昨日のホテルに行こうか。ボリュームのあるサンドイッチがあるから・・・」

前日、出会ったホテルに向かい、羽田空港行のバスに乗る人たちを見ながら吹き抜けのロビーに入ってティーラウンジに席を取る。
アメリカンクラブハウスサンドと白ワインをオーダーして自動ピアノが奏でる音楽に聞き入り、穏やかな気持ちになっていると、
「空港バスに乗る人は、連休だから何処かに行くのかな??・・・私にも何か予定があれば、あなたに出会うことはなかった・・・」
「そうだね。私にとっては詩織が急に立ち止まって、ぶつかった・・・楽しい連休の始まりだったけど」
「正直に言うと・・・苛められたいなぁ、知らない人を前にして恥ずかしい事をしてみたいなぁって、思う事があったの。昨日からの事は全然、嫌な事じゃないの・・・」
「それは、良かった。ただ、私は慣れてないからな・・・詩織の期待に応えられるかどうかわからないよ」
「うそ、地下室にあんな物があるのに・・・どうしようかな・・・言っちゃお、笑わないでね。あの変な椅子に縛られて悪戯されたい・・・」
「じゃぁ、早く帰るようにしようか・・・椅子に深く座らなきゃ、チョコン座りじゃ姿勢が悪いよ」
「いじわる・・・タイトなワンピだから、自然とずり上がってくるのを知っているでしょう・・・」
「クククッ、詩織は腰から腿にかけてのラインを強調できるタイトなスタイルが似合うからな」
「それって、褒めてる??・・・まさか、下半身が太いって言うんじゃないよね??」
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