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不倫 ~immorality~

想いを巡らす 1

前日のバケツをひっくり返したような雨も止み、宇宙の果てまで続きそうな青い空を見上げる男は眩しさを避けるために手をかざす。
「何か見えるの??」
「えっ、あぁ・・・久しぶり。元気だったようだね、調子はどう??」
「その前に、質問に答えてよ」
「不思議だなぁって・・・」
「なに??わけわかんない」
「この場所の緯度は35度くらいだけど、赤道上にいると考えて欲しいんだ」
「何だか分かんないけど良いよ。私は赤道上に立っている・・・これで良いのね」
「うん、ありがとう。赤道の周囲は凡そ4万キロ、24時間で地球は1回転する・・・時速に換算すると、4万キロ割る24で約1670キロ。時速1670キロで回転しているのに目が回らないし、つんのめる事もない。電車だと立っていられないよ・・・そんな事を思って空を見ると不思議でね」
「ウフフッ・・・おつむは重症だね。それとも彩と久しぶりに会って興奮してる??」
「そうか、久しぶりに会えるってんで興奮してたんだ。治療しなきゃ・・・」

男は自らを彩と呼んだ女の腰に手を回して抱き寄せ、何も言わずに唇を合わせる。
「クククッ・・・どうしたの、急に。皆が見てるじゃない、恥ずかしいよ」
「うん、落ち着いた。治療終了・・・食事にする、それとも風呂に入る??ベッドの方が良い??」
「その前に予約してくれたホテルを確かめたい・・・まさか、ラブホなんてことはないよね??」
「クククッ、不倫中の二人の目的はラブホが満たしてくれる・・・乗って、それとも紳士らしくエスコートしなきゃダメ??」
「そうね、健と一緒の時間はお姫様になりたいな」
健と呼ばれた男はドアを開けて彩が頭をぶつけないように気遣いながら車に乗るのを待つ。

「それでは彩さま、ホテルに向かいます。シートベルトを止めてください」
「シートベルトをしても襲わない??彩が座った時、自慢のムッチリ腿の辺りをジロッて見たでしょう、気付いていたんだから・・・エッチ」
「えっ、ごめん・・・確か、普段はジーンズが多いって聞いた記憶があるからオレのためのスカートかなって・・・」
「そうだよ、家を出る時はジーンズだったよ」
「えっ、途中で穿き替えてくれたんだ・・・クククッ、思い出すよ。昔、彩と会っていた頃の田町駅。ジュリアナ東京へ行く女子が田町駅のトイレで着替えをするんだよね。トイレに入る前は蛹、出てくると妖艶な蝶に早変わり・・・そんな事を思い出して我慢できなかったよ。感じ悪かったなら、ゴメン」
カーナビに入力する健の手元を見る彩は表情を綻ばせて、
「バブルの真っ只中、思い出すね・・・ウフフッ、そうなの、彩の太腿が大好きなんだ。なら許す、大好きなものはジロッて見たくなってもしょうがないよね・・・」

走り始めた車の周囲に一瞥をくれて、大丈夫だなと独り言ち、あっという間もなくスカートを捲り上げて股間を晒し、すぐに元に戻す。
「ウンッ??下着を着けてないの??筋が見えたよ」
「クククッ、教えてあげない・・・忘れたの??」
「うん??憶えてるよ、忘れるはずがないよ。再会から別れの朝、サヨナラを言う直前にソリソリしてツルマンにしたんだよね、それで次に会う時までソリソリを続けるって言ったんだ、忘れるわけないよ。彩の言葉を思い出しちゃアソコを大きくしてたもん」
「ほんとう、彩の事を思い出して大きくしてたの??ボッキッキィ~って・・・うちの人に、急にどうしたんだよって言われながらずっとソリソリしてたんだよ、嬉しい??」
うちの人の一言に健は反応を示さなかったものの、近況を話題にすると互いの伴侶を思い浮かべてギクシャクするのを経験しているので、一瞬話が途切れる。

「彩、会いたかったよ」
伸ばした左手を彩の腿に置いた男は前を見つめたままで言葉を掛ける。
「うん、彩も会いたかった。健の姿を見た瞬間、嬉しくて駆け出したくなる自分を抑えるのに必死だったよ・・・健の手に触れているのは嬉しいけど、事故が怖いから後でね」
「そうか、我慢するか・・・不倫の男女、久しぶりの逢瀬で我慢できずにイチャイチャして交通事故。そんな見出しになっちゃ困るしね」

他愛もない話を続け、しばらく会えなかった時間がもたらす緊張が解れた頃、ヨットの帆に似た外観のホテルに到着する。
チェックインを済ませた二人はベルボーイの案内を丁重に断り、エレベーターの扉が閉まると同時に我慢の限界と言わんばかりに彩は健に抱き付く。
小柄な彩は健の胸に顔を埋めて大きく息を吸い込み、羞恥を滲ませた瞳で見つめる。
「健は何も言わずに私の唇にチュッとして満足したかもしれないけど、彩はこれでやっと落ち着いた。久しぶりで健の匂いで胸を満たして落ち着いたよ」
シースルーエレベーターから見える横浜の街並みを気にする風もなく彩は言葉をつなぎ、無言の健は背中に回した手に力を込めて自然と頬が緩むのを意識する。
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