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待ち合わせ

待ち合わせ 2

マンション近くのスーパーで赤ワインと冷えた白ワインのハーフボトルやチーズを買い、パン屋でバケットを買い終えた頃には、ぎこちなさも消えてアユがそっと差し出した手を男はしっかりと握る。
アユは隠しきれない喜びを浮かべて怒ったような男の横顔を面白そうに覗き込み、男も諦めたと言わんばかりに肩をすくめて握った手に力を込める。
「痛いっ・・・ウフフッ、もうすぐだよ。その角を曲がればすぐだからね」

部屋に入ったアユは絵を掛けることなくそのままにして、今日のために用意したビーフシチューを火に掛ける。
今更ながら女の一人暮らし用と思えない量の不自然さに顔が赤らんでしまう。
「待っててね、すぐに用意するから・・・」
男は、部屋に入って直ぐに全体を一瞥して、
「気のせいかもしれないけど好い匂いがする。アユの部屋らしくて好いね」
男を誘う積りで掃除、整頓した部屋に抜かりはない、思惑通りに進んでいると思うと自然と頬が緩む。
その後の男は、壁に掛けた水彩画の人物画に見入り、キッチンに立つアユの後ろ姿に視線を移す。
気になる男の視線は背中でも感じることが出来る。
調理している後姿を見られるのは、女として値踏みをされているようで落ち着かない。
「そんな処で立っていられると気になるから、座ってくれると嬉しいんだけど」
「この絵のモデルはアユ??」
「そう、自画像。誰に書いてもらったもんじゃなく、私が描いたんだよ」
「ふ~ん・・・実物も魅力的だけど、キャンバスのアユも中々のモノだね・・・手伝おうか。切ることくらいなら出来るよ」
「ウフフッ・・・描く時に現実を見ながらほんの少しだけ理想に近づけたから。良く描けてるでしょう。料理が得意なの??」
「得意ってほどじゃないけど、好きだよ。出来上がりをイメージして食材を揃える。あるいは、食材からメニューをイメージする。調理、後片付けまで段取りよくする。すごく、クリエーティブな作業だと思うよ」
「料理の科学的考察ってヤツ??」
「ごめん、余計な事を言っちゃったね・・・少々、理屈っぽいのが悪いとこって分ってるんだけどね」
「そんな風に言われたら、私こそゴメンナサイ・・・お願いをしても良い??
食器を用意してくれる??」

ビーフシチューとシーフードサラダ、パンで食事を済ませた二人は、マックナイトの絵を開いて壁に立てかける。
ソファに寄りかかるようにして床に座り、男の好みで良く冷えた白ワインで乾杯する。
ほんの少し動いただけでアユの右足や右肩は男に触れ、男がアユの横顔を見ようと身体を捩じると左腿が触れる。
ほんの少し動くだけで触れる身体も、意識すると隙間を埋めることが出来ない。

肩を抱いて欲しい、そして、キスされたい。
彼の腕の中で安心しきった子犬のように身体を休ませたい。

アユは生ハムでアボカドを巻いて口に運び、男はモッツァレラチーズを巻いて塩を振りかける。
冷えてキリットした白ワインが生ハムのスモーク臭に良く合う。
「モッツァレラチーズ巻は美味しい??」
「うん、美味いよ。食べてみる??」
男は、手の中に半分残る生ハムのモッツァレラチーズ巻をアユの口に運ぶ。
「美味しい・・・アボカド巻も食べてみて」
アユも半分残るアボカド巻を男の口に運び、美味しそうに食べるのを嬉しそうに見守る。
食べ終えた男はアユの手を取り、
「レモン汁が付いてるよ」
アボカドに振りかけたレモン汁が指についているのを見つけた男は、指を口に含みレモン汁を舐め取る。
指を温かい口に含まれて舌を絡まされると全身の力が抜けてアソコが熱くなり、見つめる男の表情がぼやけてくる。

焦点の合わなくなった視線を男に向けていると、目の前が暗くなって唇を重ねられる。
二度三度とついばむように唇を合わせた男は、可愛いよと一言残して離れていき、グラスに残るワインを口にする。
「ハァハァッ・・・急に、うぅうん、いぃの・・・驚いたから喉と唇が渇いちゃった」
無言のまま口元を緩めた男はグラスに残るワインを口に含み、再び唇を合わせて流し込む。
「ングッ、ゴクッ・・・美味しい」
流し込まれたワインを飲み干したアユは両手を男の背中に回して、
「すごいの、ドキドキしてる。心臓がバクバクしてるのが分る??」
「あぁ、オレもだよ」
「うそ、あなたは余裕綽々。一度のキスで心臓が破裂しそうなほどドキドキするし、アソコがビチョビチョになるほど焦らしたんだよ。悪い男・・・もう一度、キスして。ちゃんとしたのを・・・」

髪に手櫛を入れて整えてくれ、指先で頬をなぞる間も視線を外すことなく、見つめられる羞恥で火照りを感じるほど熱くなると、やっと唇を重ねられる。
互いの唇をなぞり、息を荒げて舌を絡め、唾液を交換する濃厚なキスをする。
「可愛い、アユに惚れちゃいそうだよ」
「私は一目見た時から好きになった。一目惚れ・・・お風呂に湯を入れてくるね、待ってて」
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