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不倫 ~immorality~

再会―1

前日の雨で緑が一段と濃くなった木々に囲まれたスーパーの駐車場に一台の車が入ってくる。
夕方なので買い物客も多く駐車場にスペースを見つけると大胆に、しかし繊細に操られた車は見事に停車する。一連の動きに夫婦と思えるカップルは感嘆の視線を向けている。
夕日が西の空をオレンジ色に染める景色に頬を緩めたジーンズにトレーナー姿の女が車から降り立ち、自然な動きで乱れ髪に手櫛を入れて整える。小柄ながらも肌理の細かい色白の肌と整えられたばかりの黒髪が男の視線を釘付けにする。
女は自分に向けられる視線に気付いていないのか、それとも気にしないのか、ゆっくりと店に向かって歩き始める。
残されたのは、男の視線を快く思わない女が連れの男に向ける怒りの言葉と嫉妬交じりの視線。
「貴方の好みは、あの女性のような人なの??私じゃ満足できないんだ・・・」
「なに言ってんだよ、どっかで見たことのある人だなぁと思って・・・勘違いだったよ。さぁ、帰ろう・・・」

後姿が凛として美しく、全身の筋肉がバランス良く動いて躍動感を感じさせる。
150cm位の小柄な身体は、背筋と腹筋が美しく調和して姿勢が良いこともあって実際よりも大きく見せ、腰の位置が高く膝下を伸ばして歩く姿は自然と他人の視線を引き付ける。
後姿に見惚れた男は急いで追い越し、自然を装って振り向き顔を覗き見る。
意志の強さを感じさせる顎のラインは、物柔らかな瞳と口元によって理知的に見えることはあってもきつい印象を与える事はない。
ゆっくりと店内を巡りながらも逡巡する様子はなく、予め欲しい商品を決めてあったのか、それともイメージした献立に必要な食材を求めているのか選択に迷いなく買い物を済ませて車に戻る。
駐車場に入ってきたときと同様、決して広くはない駐車場での運転や道路に出る際の動きに戸惑う様子はなく、運動神経の良さを感じさせる。

マンションに戻った女は、静かで冷たい空気が漂う部屋に入る。
買い物袋をテーブルに置いて、フゥッ~と息を吐き、何かを感じて自室を見る。
丁度その時、スマホが着信を知らせてくれる。
「もしもし・・・あなた??どうしたの??・・・・・そう、今日は帰れないの??遅くまで残業だからホテルに泊まるの??うん分かった。それじゃぁね・・・・・」
スマホを見つめる女は、一瞬の悲しさを表情に宿してウソツキと吐き捨てる。

確かな証拠があるわけではないが浮気の兆候を感じ始めた頃、残業で遅くなったという夫のポケットにラブホの領収書を発見し確信した。
夫との出会いが脳裏をよぎる。人見知りと共に他人の思いを斟酌しすぎる女にとって、目の前に現れた男は愛を語るのも不器用で直接的であり、それまでの男たちとは違う男らしさに満ちていると感じさせた。
甘い夫婦生活の時間は、いつの間にか記憶の中にだけ存在するようになり、今では気に入らない事があると居丈高に居直るようになってしまった。
休日に何かと言い訳めいた言葉を口にしながら出掛けたり、メールを気にしている様子が見えたり、二人でいる時にスマホに出るのを躊躇ったりの回数も増えて、最近では諦めに似た気持ちになっている。

電話のせいで独り分の食事を作るのも面倒になり、翌朝の分として用意したパンなどで済ませることにする。
トレーに載せた夕食を持って自室に入り、ビールを一口飲みPCを起動してブログを開く。
今では、このブログが寂しさを癒す手段の一つになり、見知らぬ人との会話が楽しみになっている。
夫とは疎遠になりつつあり、職場の仲間や親しい友人には話しにくい事も、見知らぬ人にならブログの中で相談めいた事も言える。
何処に住んで、どんな顔をしているのかも分からない者同士が旧知の仲のように話す安心感で、時にはエッチな写真をアップしたりもする。
エッチな気分になった時、リビングなどで窓から差し込む陽光に肌を晒して独り密かに撮影するのは、心の奥底に潜む卑猥な隠し事を発散出来るという事で一石二鳥と言える。
清潔感のあるムッチリボディーにそそられます、などと言うコメントは、夫と距離が出来つつある現在、自分を見失うことなく自信を持って生きる自信になる。

ブログのコメント欄を見た女の目が驚きで大きく開き、マウスを持つ右手が震えを帯びる。
<彩さんの、くびれたウェストから腰や尻を経て太腿に至るムッチリ感にドキドキします。可能なら、ミロで語り合う時間を持ちたいです・・・健>
胸の高鳴りが止まらない。唇が乾く・・・喉の渇きを癒すためにビールを口に含む。

お茶の水駅の近く、狭い路地裏の喫茶店・・・・<純喫茶ミロ>
今もあるかな・・・ナポリタンの味が懐かしい・・・
ジュリアナ東京やトゥーリアの華やかさはないけれど、彩と健の青春があった・・・
間違いない、健だ・・・心が騒ぐ・・・
学生時代、何度か肌を重ねた相手、将来を誓った訳ではないけれど2人の将来に何の不安も感じることはなかった。
あの日、電話の向こうの健の声は今でもはっきり覚えている・・・
「彩、オレ達はもう会えない・・・」
「・・・・・・・」理由を聞く気にもならず、受話器を置いた。

心を鎮めるために、用意した夕食を努めてゆっくり口に運び、それでも治まらない動悸を鎮めるために、ヨガマットを敷いて無心にヨガをする。
ようやく平静を取り戻し、胸が痛くなるほど湧き上がっていた怒りも冷めたので、コーヒーを淹れて机に戻る。
書かれたメールアドレスを睨んで何度も迷った挙句、目を閉じて送信する。

<人違いじゃなさそうだけど、どういう積り??・・・・・彩>
直ぐに返信が届いた。
<人違いじゃなくて良かった。不快な思いをさせたと思うけど許して欲しい。改めて連絡します・・・健>
何もする気にならず,何も手につかないまま火曜日の夜は更けていき、ベッドに入って眠れぬ時間を悶々と過ごす内、指が自然と股間に伸びる。
こんな時にと思いながらも身体は刺激を求め、知らず知らずの内に喘ぎ声を漏らしてしまう。
ウッウッ、アァァ~ン・・・自分の漏らす秘めやかで甘い声が気分を盛り上げる。
目を閉じて股間に伸ばした指を蠢かしても、絶えて久しい夫の顔は浮かばず、恨みに思う事はあっても二度と会いたいと思わなかった健の顔が蘇る。
今更どうして・・・・・
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テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

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