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堕ちる

独りで-6

窓用シャッターを開け放ったまま眠った紗耶香は、差し込む陽光を眩しそうに開いた手で遮り、気持ちの良い目覚めに大きな欠伸をする。
アンッ・・・オナニーで昇りつめた後、シャワーも浴びずに寝たために身に着けるものは何もなく、股間に指を伸ばして跡を確かめ、誰もいない部屋で羞恥の声を漏らす。
ナイトテーブルに目をやると、時計はもう少しで12時になる事を教えてくれる。

シャワーを浴びて汗と共に僅かに残っていた気の迷いも流し去り、スッキリした気持ちで食事の準備をする。
予ねて用意しておいた食材で調理を始め、カツ丼と勝ち栗、納豆の昼食を摂る。
カツ丼と勝ち栗で勝ち運を祈り、納豆で粘り強く勝負する事を誓う。

昨年の有馬記念、験担ぎの好きなお客様が同じ食事で3連単10万超えの馬券を取ったと自慢していた。
お蔭で年明け早々に同伴した時、予想外のお年玉をもらってアフターでホテルに付き合った。
「クククッ・・・あのお客様は馬券上手だけどエッチは超が付くほど下手。新田さんの帰りを待てない・・・今日、行ってみよう・・・もう一度だけ。三度目は絶対に独りでは行かない」
またしても誰も聞く者がいないのを承知で独り言ちる。
僅かに残っていた否定する気持ちを片隅に押しやり、一人で行った一度目は勝てたのだから、今回も大丈夫だと自分に言い聞かせる。


「こんにちは。今日もお一人ですか??」
「そうなの、新田さんは長い出張だから、我慢出来ずに一人で来ちゃった。怒られちゃうかもしれない」
「ウフフッ、新田さまは紗耶香さんのように美しい女性を怒ったりしませんよ・・・ごゆっくり、お楽しみください。幸運に恵まれますように・・・」
初めて来た時の瑞樹は、値踏みするように全身をねめ回したが、二度目の今日はそんな事もなく親しく声を掛けてくれる。
瑞樹のように同性から見ても魅力的な女性に、美しいと言われるのはお世辞混じりだとしても悪い気はしない。

用意してきた100万円の内50万円をチップに替えた紗耶香は、迷うことなくバカラ台に向かう。
このカジノはルーレットもバカラもミニマム5000円でマックスが50万円の一種類。
新田の話では大口客のためのハイレートルームがあるらしい。
近くにいたバニーガールにキールロワイヤルを頼み、気持ちを落ち着かせることにする。
フルートグラスを手に持ち、カシスの赤を楽しみサッパリとしたカクテルを味わっていると、客の手が伸びて思い思いにバンカーとプレイヤーに賭ける。
ノーモアベット・・・ディーラーの声と共にカードが配られ、バンカーが8、プレイヤーが5でバンカーの勝ち。
その次も三枚目を引いたバンカーが勝った。

シューターを見つめ、カードが語り掛けるのを感じた紗耶香はグラスを置いてバンカーに10万円をベットする。バンカーの勝ちが続き、プレイヤーが勝つと思った人が多いのかバンカーサイドの掛け金が不足している。
もう一度シューターとディーラーを見た紗耶香は10万円分のチップを追加する。
ノーモアベット・・・ディーラーのカードは絵札と9でプレイヤーは6、ディーラーが勝った。
バンカーで勝った紗耶香は賭け金の20万円とコミッションを引かれた19万円分のチップを受け取る。
勝負の早いバカラで自分のペースを守り、場の雰囲気にのまれる事を本能的に嫌った紗耶香はグラスを手に取り他の客がベットする様子を眺めて気持ちを落ち着かせる。
三度続けてバンカーが勝ったため、またもや賭けはプレイヤーサイドに偏り、紗耶香は自らの勘を信じてバンカーサイドに20万円をベットする。
またもやバンカーの勝ちだった。
グラスに残るキールロワイヤルを飲み干しケンする積りだった紗耶香だが、4回連続でバンカーが勝ったためプレイヤーに賭ける人が多く賭けが成立しないようなのでバンカーに40万円ベットする。
5回連続でバンカーが勝つ確率は1/32。ここで勝つようならVIPルームに行こうかという思いが頭をよぎる。
またしてもバンカーが勝った。
130万円近くに増えたチップを持ってバカラ台を離れ、バーカウンターで休憩する事にする。

自分が座っていたバカラ台を見ながらキールロワイヤルを飲んでいるとタキシード姿のカジノスタッフが近付いてくる。
「見惚れてしまいます。迷いなく信じる道を突き進む。ギャンブルは突き詰めると自分との戦いになるんですよ・・・ここで勝つ人を何人も見ての感想ですがね。負けると迷う、勝ち続けても常人は迷う。勝負は一瞬の積み重ねで白が出るか黒が出るかは常に1/2なんですよね。白が二回続く確率は1/4、三回なら1/8、五度目となると1/32・・・こうなると常人は平均を求めてしまう。ぼつぼつ黒じゃないかと・・・自分を信じる人は1/32に賭けられる。素晴らしいです、本物のギャンブラーです。敬意を込めて狂気を持ったギャンブラーと呼ばせていただきます・・・アッ、ごめんなさい。長々と余計な事を話してしまいました。申し訳ございません」
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