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堕ちる

カジノ-2

「では、紗耶香の腕前を見せてもらおうか」
レストランを出た二人は、何の変哲もない扉の前に立つ正装の男に姓を名乗る。
男は壁の一部をスライドさせてオートロックを解錠するための指紋認証式のシステムに指をセットする。
音もなくスライド式のドアは開き、男は二人を手で誘導する。
ドアの先は小さな小部屋になっており、天井には監視カメラが付いている。
「何か、すごい。秘密の場所って感じがありあり。歓迎されざる人間は、この小部屋で天井から出る毒ガスでやっつけられてしまいそうな雰囲気があるよ」
「シィッ~、マイクがセットされているかも分かんないよ」

「いらっしゃいませ、新田さま。ご婦人の言葉は聞かなかったことにしますから安心してください」
「えっ??あっ・・・ごめんなさい。冗談のつもりだったのですが、本当にごめんなさい」
「ウフフッ、私の方こそゴメンナサイ、脅すつもりはありませんよ。扉を開けます・・・どうぞ中へ」
二つ目のドアを入って直ぐの受付カウンターには沙也加でさえ、ハッとするほど美しい女性が微笑みと共に迎えてくれる。
「お久しぶりです、新田さま。今日は珍しく美しい女性をご同伴ですね・・・紹介してくれないの??」
馴れ馴れしい言葉遣いに違和感を抱く事もなく、部屋の様子が気になる紗耶香は耳をカウンターの女性に、視線は奥に走らせる。
「この人は紗耶香さん・・・受付のこちらは」
「瑞樹と申します。紗耶香さん、今日は非日常の世界をお楽しみください」
瑞樹と名乗る女は、紗耶香を値踏みするように素早く全身に視線を走らせ、
「ルールなどのご説明をいたしますか??」
「いや、いいよ。私が説明するから・・・」
「分りました。それでは、お楽しみください。紗耶香さんに幸運が宿りますように・・・」
気が逸る紗耶香が先に立って一歩踏み出した瞬間をとらえて、瑞樹の手が新田に重ねられたのを気付かない。

豪華なシャンデリアが眩いばかりに光り輝き、床は真っ赤な絨毯が敷かれている。
テーブルと客の間を縫うように歩くバニーガールがいる。
客だった女性がある日からバニーガールになっていると言った新田の言葉が思い出される。
乳房と股間はかろうじて隠れているものの男性客の欲情をそそる事は間違いない。但し、それは平常なら、という事で賭けに興じている男たちはアルコールを受け取る以外は興味を示そうともしない。
正面の奥にステージがあり、中央にポールが立っている事からポールダンスを見せる事があるのかもしれない。

紗耶香の表情に不安と興奮が宿った事を見て取った新田は顔を近付けて話しかける。
「スロットマシンは無く、メインはルーレットとバカラ、客が希望すればポーカーやブラックジャックもやれるし、クラップスなどダイスを使うのも受けてくれるし丁半など和式の博打もやれるよ。高額の場合は別室を用意されるらしいけど、オレは経験がないから解らない」
「じゃぁ、経験がないけどルーレットをやりたい。しばらく見るだけでも良いんでしょう??」
「良いよ、紗耶香はカジノに向いているかもしれないね。早く賭けたいって言うのかと思ったら、様子を見る冷静さがある。自分を見失う事がないのは素質充分だよ。ギャンブルの神さまは、そういう人を愛すると思うよ」
30万円をチップに交換した新田は半分を紗耶香に渡す。

アメリカンスタイルだと言うルーレット台で賭け方を含むルールを教わりながら見ていた紗耶香は、コーナーベットと言う4つの数字に賭け、当たれば9倍の配当になる方法を選びそれを2か所ベットする。
5000円のチップを2か所にベットした紗耶香は、ディーラーの「ノーモアベット」と言う言葉を聞くと、瞬きもせずに見つめ、ディーラーが「11黒」と宣言すると、10・11・13・14のコーナーに賭けていた紗耶香は、
「当たったの??当たったよね??」と上気した表情で新田に問いかける。
「あぁ、当たった。5000円を2か所、1万円賭けて配当が45000円。言った通り紗耶香は素質があるんだな。おめでとう」
外れた新田は、我が事のように喜び満面の笑みで紗耶香を見つめる。

掛け金を二倍にした紗耶香はコーナーベットを繰り返して着実に勝ちを積み上げていく。
いつしか、ベットする金額は3万円になり、そばにいる新田の存在を忘れたようにルーレットにのめり込んでいく。
紗耶香から視線を外さないようにしながらバーカウンターに移動し、ジントニックを口にしていると受付にいたはずの瑞樹がさり気なく近づいてくる。
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