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お伽話

心花 -31

俯せの心花はゴクッと唾を飲んだあと無言になり、何かを期待して抱きかかえた枕に顔を埋め、
典哉はベビードール越しに身体のラインをなぞる。
肩を撫で脇から腰に手を這わせて上半身の輪郭を確かめ、ウェストのくびれからムッチリと張り出した腰から太腿に続くラインの艶めかしさに満足する。
「あの日もパンツスーツの中にこんなにエロイ身体を隠していたんだね」
「それは誉め言葉と受け取っていいのかなぁ??」
「クククッ・・・オレの手がもう少し確かめたいってさ。褒めるかどうかは、その後でいいだろう??」
「存分にどうぞ。フミヤの手による検査が終わるまで邪魔しないから・・・ウフフッ、ドキドキする」

透け感のある真っ赤なランジェリーと白い太腿の対比が優美な柔らかさを強調して頬ずりしたくなるほど妖しい色気をまき散らし、ベビードールとショーツが隠し切れないムッチリとした裏腿は手を伸ばすのさえ躊躇う蠱惑的な魅力が溢れる。
「どうしたの??焦らしてる積りなの??」
心花の言葉で迷いを吹っ切った典哉は、
「今更だけどミカは好い女だな。化粧や衣装はほとんどの人が気にするけど後ろ姿や歩く姿は案外と気にしない・・・何日か前のことだけど初めて会った日のことを思い出すよ。パンツスーツでヒールの音も高らかに颯爽と歩いていた。ハイヒールで膝を伸ばしてつま先がまっすぐ伸びて格好よかったよ」
「えぇ、フミヤは私の歩く姿に惚れたの??喜んでいいのかなぁ??」
「クククッ、歩く姿だけじゃないよ、後ろ姿が凛として惚れ惚れする。ミカを正面から見ると美しいなぁと思うけど、今もそうだけど後ろ姿を見ると食事や生活習慣ってのかな、きちんと自分を意識して生活してるのが分かるよ」
「後ろ姿を意識してる積りはないけど信じる・・・でも、見るだけじゃわからないでしょう??」
「そうだな・・・」

ヒッ・・・アンッアゥッ・・・典哉の指先が耳の後ろを撫でるとヒッと驚きの声を漏らし、首筋を刷くように動くと甘い吐息に変化する。
ベビードールの皺を伸ばすような繊細な動きで手の平が背中を撫で降り、腰に行きつくと指が背骨の左右を撫で上がる。
背中で円を描くように手の平が自由に舞い、心花の両手がシーツを掴み背後からでも分かるくらい歯を食いしばるのを見ると覆いかぶさるようにして耳のそばで息を吹きかけながら、痛いことはしないから力を抜いてと囁く。
「うん、久しぶりだから緊張しちゃう」
ハァッ~~、息を吹きかけながら耳朶を乾いた舌でなぞり、尖らせた舌先が耳穴に侵入する。
ゾワゾワッ・・・虫が這いずるような音が脳に響き、悲鳴にも似た声を漏らす。
「アウッ、ヒィッ~・・・いやんっ、変な感じ。鳥肌が・・・すごいでしょう??」
「鳥肌もすごいけどミカの白い肌に触れるとねっとりオレに絡みついてくるよ」
「いやっ、そんなことを言わないで。私のすべてがエッチの塊のような言い方を・・・そんなことを言われてもフミヤが好き」
「ベッドで横たわるミカにはスケベの神様が宿っているんだろう??仕事でもなんでも目の前のことに頑張りすぎるミカに神様が与えてくれたご褒美がオレだと嬉しいな」

ングッ、ウググッ・・・典哉の首に手を回して引き寄せた心花はむしゃぶりつくように唇を合わせて言葉を封じる。
フグフグッ・・・舌を絡ませて互いの身体をまさぐり合い、唾液を交換して真っ赤な瞳で見つめ合う。
「気持ちよくして。フミヤを忘れられない想い出をこの身体に刻んで、お願い」
再び枕に顔を埋めた心花の背中を撫でると、物足りないのかウネウネと上半身を蠢かし、典哉の指がベビードールの裾から侵入してTバックを確かめるように尻の割れ目に沿って指を這わせると、アンッと艶めかしい声を漏らして身体を固くする。
尻を揉むと割れ目がキュッと締まり、内腿を爪の先で撫でると足の付け根がピクピク反応する。
ベビードール越しに濡らした舌で尻の割れ目に沿って舐め上げ、わき腹を手の平で撫で擦る。
「アヒッ、クゥッ~・・・そう、ンッ、気持ちいぃ。私は何もしなくていいの??ねぇ、何もしなくていいの??」
「いいんだよ、ミカが気持ちよくなってくれれば嬉しい。白くてねっとりした肌の感触がベビードール越しでも感じられる。本当にエロイ身体だよ」

プリンと引き締まった尻、ムッチリと張り出した太腿から腰のライン、ムニュムニュと艶めかしく手の平に吸い付く内腿、心花の身体はどこに触れても指先がエロい刺激を感じると言いながら刷くように撫でまわす。
「いやっ、後ろ姿に惚れるだけじゃ嫌。前は??私のオッパイに何も感じないの??」
俯せから仰向けに姿勢を替えた心花の瞳は淫靡に燃え上り、昂奮で乾いた唇を赤い舌が舐める色っぽさは典哉の股間を刺激する。
「あんっ、なに??私の足をつつく固い棒が有る・・・何、なんなの??まさか・・・ウフフッ、違うよね??」

股間を心花の腿に擦りつけたままで股間までずり上がり、膝で身体を支えて頬を両手を挟み、言葉もなく見つめてニコッと微笑む。
「イヤンッ、自分でもわかるほどドキドキしているのにフミヤは余裕綽々、嫌い・・・」
「抑えきれない昂奮を必死に隠してるんだよ・・・分かるだろ??火傷するほど熱いだろう??」
「熱いし固い。もっと気持ちよくして、フミヤのことが忘れられない女になりたいの」
真っ赤なベビードールの透け感が白い肌を一層柔らかで優しい雰囲気を醸し出して手を伸ばさずにいられない。
ウェストの括れから腰に続く成熟した女性らしいラインに手を這わせ、太腿のムッチリ感が手の平に与えてくれる感触に目を細める。

お伽話

心花 -30

「ほどほどにね・・・するべき事が残っているでしょう??私にも・・・」
振り返った典哉が目にしたのは真っ赤なベビードールを着けた白い肌が入浴直後という事もあって乳白色に輝く心花の色っぽい姿。
「どうしたの??私がベビードールを着けるとびっくりする??赤がいいって言ったのはフミヤだよ」
「上品な色気にドキドキする」
頭の天辺から足元まで舐めるように身体を見回し、右から左から心花の背後まで矯めつ眇めつ見た典哉は見開いた瞳を宙に向けて、フゥッ~と息を吐く。
「似合わない??それともエロさが足りない??」
「似合ってるし可愛いよ、嘘じゃない・・・ミカの違った顔を見るたびに抱きたくなる。明日、無事に家に帰れるか心配になるよ。干からびてカラカラになるまで生気を吸い取られたらどうしよう??」
「私のような好い女にすべてを吸い取られるのは本望でしょう??違うの??」
そうだな・・・と、つぶやいてグラスを口にする典哉の股間に手を伸ばした心花は口を尖らせる。
「嘘つき・・・・・」
「オレは嘘つきか??小っちゃいママなのが気にいらないか??・・・緊張や昂奮が過ぎるとそんな事があるんだよ。今のオレがそんな状態だな、エロっぽいミカの新たな一面を見て頭が消化できずにいる」
「クククッ・・・休ませてあげる。このままで寝るから朝は・・・ねっ、気持ちよく起こしてね」

カーテンを引いてフットライトだけを残してすべての明かりを消し、ベッドに入った二人は見つめ合う。
「ミカとは名前だけを交換しただけだね。苗字も住所も知らないまま・・・明日もこのままかな??」
「怒らないで聞いてくれる??・・・明日、別れるきにフミヤの連絡先だけ教えてくれる??」
「どうして??」
「フミヤと付き合うと私の生活のほとんどを占めそうな気がするの・・・それは幸せなことだと思うけど、これまで仕事を最優先で頑張ってきただけに、それでいいのかなって感じる部分が残ってる。すごく失礼でわがままなお願いだけど許してくれないかな??」
「う~ん・・・失礼とは思わないけど、わがままだと思う・・・わかった、いいよ。ミカの気持ち次第、連絡をもらえなきゃ振られたと思って諦めるよ」
「ありがとう・・・でも、そんな簡単に分かってもらえるのも寂しい気持ちもするけどね。フミヤの事は忘れられないと思うの・・・たぶん、連絡することになると思うけど一週間か二週間、仕事が人生のすべてじゃないと確信できるまで」
「待ってるよ、ミカが結論を出すのを。焦らなくていいからね・・・寝ようか」
「うん、腕枕」

典哉の腕を枕にして横たわり、眠ろうとして目を閉じても睡魔は遠ざかるばかりで穏やかな寝息を聞くと気持ちが騒ぐ。
典哉と付き合いたいと思うものの、それは仕事に集中できなくなりそうで、どちらも失いたくないと迷う心花の気持ちを知らぬげに一人で夢の世界で遊ぶ典哉の邪魔をして起こしたくなる。
恋愛から遠ざかりすぎたせいなのか、あるいはこれまでの男運の悪さが臆病にさせるのか好きな男の胸に飛び込むことが出来ない。
起こさないように気遣いながら顔の向きを変えると目の前にその胸がある。

そっと指先で胸を撫でてみる。
ウ~ン・・・ス~ス~・・・目を閉じたまま一瞬、顔をしかめたものの直ぐに何事もなかったかのように癪な寝息を漏らす。
本当に私の事を大切だと思っていれば、連絡するかどうか分からないと言っても平気なままでいる神経が理解できない。
連絡してこないはずがないと自信があるのか、あるいは好きだというのが嘘で一時の遊び相手が向こうから飛び込んできたと思っているのか不安になる。
胸に置いた指先に力を込めて睡眠の邪魔をする勇気もない。
連絡するかしないかの選択権は留保したものの、嫌われることを恐れている。
明日、私のすべてを教えるとフミヤはどんな顔で喜んでくれるだろうか。
喜んでくれるはず、そんなことを考えるうちに夢の世界の住人になっていた。


目覚めた典哉は静かにベッドを降りてミネラルウォーターで喉を潤す。
ベッドの心花は屈託なく幸せそうな寝顔を見せて清楚で理知的な雰囲気を壊す事はない。
今日が最後になるのだろうか、それとも連絡をもらえるだろうかと考えると昨夜と変わらない寝顔を見るのが苦しくなる。
ゴクッ・・・昂奮をミネラルウォーターで冷ました典哉は心花に添い寝するように横たわり、頬に手を添えて肌の感触を確かめ首から腕へと撫でていく。
手の甲を擦り、指を絡めると握り返してくる。
「気付かないと思っていた??くすぐったいから目が覚めちゃうよ・・・私にも飲ませて」
典哉が心花に触れたのはミネラルウォーターを飲んだ後で今の言葉には矛盾があり、それが気持ちに余裕を生む。
口移しに飲ませてそのままキスをする。
「ウフフッ・・・目が覚めて手を伸ばすと好きな男の肌に触れるって幸せ」
典哉を蕩かす笑みに一瞬の影が差す。
この幸せと仕事の達成感を得ることは両立するだろうかと不安が心花の脳裏をよぎる。

俯せの心花の背中から腿まで手を滑らせて、
「柔らかくて清潔感があってエロさも兼ね備えている。ミカの肌に触れると吸いこまれて同化するようで気持ちが落ち着くよ」
「いかにも色気たっぷりのエロイ女子は好きじゃないの??」
「一日中エッチしたいわけじゃなく洒落た店で買い物や食事もしたい。エロ過ぎると気が散って食事も楽しめないだろう??・・・女子の身体にもTPOを求めたい、もちろん、その前にオレがTPOを弁えなきゃいけないけどね」
「クククッ、フミヤがエロを忘れるのは難しいんじゃない・・・今日は日曜日、今日のフミヤは紳士??それとも狡猾な狼なの??」
「どうかな・・・赤いベビードールを着けたミカは欲情を刺激する小悪魔。愛に飢えた紳士は赤いベビードールと白い肌に刺激されて獣に変身する」

おとぎ話

可愛い女

「ねぇ、お願いがあるんだけど聞いてもらえない??」
「いいよ、どうすればいい??」
「簡単に返事しても大丈夫なの??」
「頭のいい君の言う事だから、私に出来ない事を頼むわけがない。合理的に考える人だと思っているから」
「合理的か、可愛くない女だよね。今日、飲みに連れて行って欲しいの」
「珍しいね、君がそんな事を言うの」
「だめ??私は可愛くない女だから、しょうがないけどね」
「いや、行こう。楽しい方じゃなくじゃなく悪い酒のようだけどいいよ」
「仕事が思い通りに運ばなかったの・・・」
「そうか、判った。今日は定時で上がる??」
「うん、早くこの場を離れたい」
「店は私が選んでいいね??後で連絡するよ」


「ごめんなさい、ムリ言って」
「そんな事はないよ。それより、場所は判りやすかった??」
「1階のタイ料理店で食べたことがあったからすぐ判った。階段を上がった事はなかったけどね・・・いいお店だね」
「タバコは吸わないし、匂いも嫌いだけど。ここで他人の吸う葉巻やパイプタバコの匂いや漂う煙を見ているのは嫌いじゃないよ」
「私はシガーバーって初めて入ったけど、大人の男のお店って感じだね」
「オレもこの店の雰囲気が好きなんだ。それより何を飲む・・・任せてくれる??」
「うん、任せる」
「彼女にキッス・イン・ザ・ダークを。オレはブッカーズのロックをお願いします」

「暗闇でキス・・・意味深な名前だね」
「クククッ、勘繰りはナシだよ。仕事の愚痴を聞こうか??どうする??」
「愚痴を聞いて欲しかった訳じゃないの」
「おや・・・」

どうぞ・・・カウンターには深紅のキッス・イン・ザ・ダークと艶のある濃い琥珀色のブッカーズのロックが差し出される。
「きれい・・・」
「甘いし見た目に騙されて飲み過ぎちゃだめだよ。結構、強いからね・・・」
「ふ~ん、飲みすぎてみようかな・・・」
「意外だね、甘え上手なんだ・・・」
「うそっ、そんなことを言われたことがない。自分でも思うけど私は可愛げのない女だから」
「誰かに言われたことがある???」
「う~ん、はっきり言われたことはないけど、男性の視線がそう言っているような気がする」
「オレの視線にも感じてた??」
「あなたは違う。自信家だから、私に負けるとは思っていない・・・違う??」
「半分当たりで残りはハズレ」
「そう、当たったのは??」
「自信家は当たり。君に負けると思っていないの部分は考えたこともない」
「自信家なんだ??」
「そう、自信はあるよ。出来ることには自信がある、できないことには自信がない」
「言われてみれば・・・苦手かなと思う事は、後輩にも平気で聞いてるね・・・私も、こんな事を知らないのって思うような事を聞かれた事がある」
「そうか、そんなに情けない事を聞いたか」
「フフフッ、そんなとこが好き・・・あっ、勘違いしないで人間として好きってことだよ」

「可愛いね・・・」
「えっ・・・」
「お酒はあまり強くないのかな、目の縁が赤くなってるよ」
「なんだ、そっちか・・・飲みなれてないから。何度も言うけど、可愛くない女だから誘われる事もないしね」
「君は勘違いしてるよ。男が君を誘わないのは仕事が出来るし、美人でファッションセンスもフェミニン系でまとめた好い女。スキがなさすぎるんだよ」
「ウソ、そんなこと考えたこともない」
「君はシャープで好い女。少しスキを見せる女性を可愛いな、守ってやりたいなって思う男が多いよ」
「甘え上手は可愛い女??」
「そうだと思うよ。猫なで声でゴロニャーンじゃなく、素直に気持ちを表現すればいいんだよ」
「私は、頑張り過ぎているのかな??」
「断言できないけど、たぶんね。でも無理して合わせる事はないよ、それじゃ魅力が損なわれる。好い女に相応しい男が現れるよ」
「本当に??・・・なんか自信が湧いてきた、お代わりをください。酔ったら介抱してくるでしょう??」
「オレで良いならね。君が思っているより危険な男かもしれないよ」
「平然と言うところが自信家の表れだね。あなたになら壊されてみたい、甘え上手な女にしてくれる??」
「今日はやめとこう。酔った君の弱みに付け込んだりしたくない」
「そう、期待して損しちゃった。今日の事は忘れてくれると嬉しいな・・・休み明けにあなたの顔を見られなくなっちゃう」

「酔った君を一人で帰すのは不安だからホテルの部屋を取ろうか・・・」
「帰る・・・優しい振りをされると惨めになるから」
「今晩は手を出さないって約束する。目覚めて酔いが醒めていたら、告白させてほしい。付き合ってほしいと・・・返事は直ぐでなくてもいいから」
「ほんとう??嘘じゃないのね??・・・酔ってないと保証するから今、告白してほしいな」
「オレと付き合ってほしい。出来ることなら返事をすぐに聞きたい」
「ありがとう。こんな私でよかったら、あなたのそばにいたい」
「オレの方こそありがとう。これからオレの前では弱音を吐く、そしてオレに頼る・・どう出来る??」
「うん、その言葉を聞きたくて誘ったんだから・・・ホテルの部屋を取るんでしょう??」


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おとぎ話

後悔

「久しぶりだね・・・」
「ごめんなさい、急に連絡して・・・元気だった??」
「見ての通り元気だよ。待たせちゃったかな??」
「あなたと過ごした時間、待つのは慣れていたから平気」
「そうだね、あの頃のオレは若すぎた。自分のことを考えるのに精一杯だった」
「ごめんなさい、そんな事を言うために連絡したんじゃなかったのに」
「しょうがない、君は愚痴も言わずにオレの前から消えたんだから」
「あの頃の愚痴を言うためじゃないの・・・」

「ジントニックを下さい。これはスプモーニ??」
「私にお代わりを下さい。あなたと初めてのデートで飲んだカクテル」
「そうだったね、淡いピンクが似合っているよ。今は幸せだろうね??」
「それなりにね・・・」
「そう、それは良かった」
「あなたは??」
「ウッ、うん。幸せだよ」
「ウフフッ、変わってないのね」
「なにが??」
「あなたの癖よ」
「癖??何のこと??」
「あの頃、言わなかったけど・・・フフフッ」
「気持ち悪いな、何だよ??」
「あなたは嘘をつく時、ウッ・・・一瞬の間があるの」
「そうか、何でもお見通しだったんだ」
「あなたの事は分かった積りだったけど自分の事は分かってなかった」

「少し酔っちゃったみたい・・・外を歩きたい」
「雨が降りそうだったよ」
「いいの、雨に濡れても。失敗した想い出は流しちゃいたい」
「チェックして下さい」

「あなたは付き合ってる人がいるの??」
「今は居ないよ・・・」
「そうなんだ、今は居ないんだ・・・」
「君の記憶が頭から離れなくてね、フフフッ、後悔先に立たずってヤツだよ・・・川沿いの夜景ってきれいだね。宝石箱を開けたようにキラキラして」
「そうね、川に揺れる宝石たちもきれい・・・」
「君も相変わらずきれいだよ」
「あの頃はそんな優しい言葉を掛けて貰えなかった」
「あぁ、若かったとしか言いようがない、悪かったよ」
「ううぅん。私もあなたの望むような女になれなかった」
「オレには余裕がなかったからね。君を思いやることが出来なかった」
「今の私なら理解できるんだけど・・・」
「いや、それはオレも同じ。今のオレなら・・・」
「今のオレなら何・・・その先を聞かせて欲しい」
「その先は・・・止めとくよ」

「誰もいない夜の街をこうして2人で歩いたことを覚えてる??」
「あぁ、覚えてるよ。初めて2人で歩いた日は・・・途中で雨が降り始めて、オレのコートを二人で頭から被って地下鉄の駅まで走った」
「そう、そうだった。あの日が一番楽しかったかも分かんない」
「ヒドイ男だね、オレは・・・初めてのデートの日が一番楽しかったなんて、好きだった女に言わせるのは」
「うん、私は寂しさを我慢できなかったんだよね・・・」
「アッ、雨だ。今日はコートを着てないから上着で我慢してくれる??」
「うん・・・できる事なら・・・」
「なに??駅まで走るよ」
「あの日と同じように・・・して欲しい。覚えているなら・・・ダメ??」
「・・・・・」
「私のことをきれいって言ったのはウソなの??一瞬の間はなかったよ」
「わかった・・・一日たりと君のことを忘れた日はなかった」
「私も・・・電話1本かけるのに今日ほど躊躇した事はなかったけど、あなたのことが好き。今でも大好きなの」

「レモンのような味がするキスだね」
「エッ??まさか、初恋の味なんて言わないよね」
「スプモーニはグレープフルーツジュースが入っているからね」
「ウフフッ、確かに・・・取り返せるかな、時間を」
「あぁ。オレはさっきも言ったけど君のことを忘れたことはなかった」
「私もあなたのことを忘れたことはなかった」
「じゃぁ、大丈夫だ。離れていた時間はお互いを思いやる時間だったんだよ。オレには反省する時間がたっぷりあった」
「うん、今度はあなたの望む女になれると思う」
「いや、今度はそんな事を望まない。同じ過ちで君を二度と失うようなことをしたくない」
「嬉しい、ありがとう・・・離れていた時間は愛を熟成する時間だったのかな??」
「きっと、そうだよ」
「思い切って連絡してよかった・・・抱いて。ホウセンカの種が弾けるように私がどこかに行かないように抱きしめて」

「あなたは今、幸せ???」
「今、この一瞬は今までの人生で一番幸せな時間だよ」
「ウフフッ、ありがとう。あなたの家へ行ってもいい??」
「一緒に住んで時間を取り戻そう。部屋はそのままにしてあるよ」
「ほんとに??私の記憶があなたの部屋に刻まれたままなんだ・・・もう1度キスして」

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