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ピロートーク

「乗っかっても重くない??大丈夫??」
「彩の重さを感じるこの格好は好きだよ。誰にも邪魔される事なく一人占めに出来るんだからね」
「ウフフッ、本当に彩の事が好きなんだ・・・ねぇ、どれくらい好きか教えてくれる??」
「う~ん、そうだな・・・美ヶ原高原で見る星の数ほど好きだよ。どこまでも遮るものがなく広がる満天の星。空いっぱいに散りばめた星たちは一つ一つがきらびやかな宝石・・・それはすべてオレから彩へのプレゼント。誕生日が近いんだろう??」
「うん、憶えていてくれたんだ。ありがとう・・・彩はね、湘南海岸・・・やめとく、伊豆半島の海岸にある砂粒の数ほどあなたの事が好き」
「伊豆半島の白い砂にしてくれたの??・・・それとも、湘南の砂は誰かに取っとくの??」
「いじわる・・・きれいな白い砂にしてあげたの、彩の心と同じ真っ白で清らかな・・・納得した??」
仰向けに寝る男の身体に重なるように乗った彩は、身体を支える事もせずに全体重を預ける。小柄な彩を苦も無く支える男は苦しそうな素振りも見せず、眩しそうに目を細めて髪を撫でる。

「ウフフッ、好きな男に髪を撫でられると気持ちいぃ。抱かれている時もいいけど、終わった後の気だるさの中で優しくされると愛されているんだなって思えて胸が熱くなる」
オレも同じ思いだよと、言葉をつないだ男は身体に乗る彩の背中や脇腹、お尻を撫でながら唇を突き出す。
「くすぐったい・・そんなとこ・・・」
「じゃ、ここは・・・」
「クククッ・・・大好きだよ。だからくすぐらないで・・・クククッ、だめっ」
「オレも大好き・・・彩のいない生活は考えられない」
「キスしたいの??口を尖らせて・・・お願いしなきゃダメッ、させてあげない」
「愛する彩の唇に挨拶をしたい」
「あぁ~ン・・・もっと、言って」
「彩の唇も身体もオレだけのもの」
「ほんとに??・・・嬉しい」
「彩はほんとに可愛い」
「ウフフッ・・・ねぇ、何かお話を聞かせて・・・」

男は身体から下ろして仰向けに寝かせた彩の方を向き添い寝する。
「この青いシーツは海。オレは大海原を1人漂流している」
「うんうん。それで、どうなっちゃうの??」
「泳ぎ疲れて諦めの心境になりかかった頃、遠くに島影が見える。幻影なのか、本当の島なのか分からないけど白い砂浜が広がる島を目指して必死に泳ぐ」
「頑張ってね」
「ようやく、島に辿り着いたもののがっかりするような景色があった。砂浜こそが幻影で白く見えたのは、そそり立つ白い岩肌だった・・・泳いできた海を振り返ると、サメの背びれが波を蹴立ててオレに向かってくる」
「大変だ・・・サメをやっつけて、フカヒレにして売っちゃう??」
「それも考えたけど、ピノキオのように飲み込まれると彩に会えなくなる。そこでオレは必死に崖をよじ登る」
「ガンバレ・ガンバレ、サメの餌にならないでよ・・・彩は帰りを待ってるからね」

「ようやく険しい崖をよじ登ったオレは岬の先端に立って、島の名前を彩島と命名した。岬は指のように5コに分かれている」
「くすぐったい・・・足の指をくすぐらないでよ」
「あのね、暫く黙ってくれる」
「アヤアヤサー・・・」
「くくくっ、オヤジ以下のオバサンギャグだ」
「フフフッ、続きは・・・」
「喉が渇いたオレは水を求めて歩き始める」

立てた人さし指と中指を自分に見立てて彩の足を指から膝へ、その先へと水を求めて歩き続ける。
「草1本生えていない白い島肌の美しさに見惚れていたオレは不注意から海へ・・・ドボーン」
「あ~ぁ、せっかく彩島に辿り着いたのに・・・」
「必死に泳ぐ・・・今は水が枯れているが滝のような処へ泳ぎ着く。記憶の底にある何か懐かしい景色を見ながら登り始める」
「いやぁ~ん、そんなとこ・・・クチュクチュされると・・・」
「滝壺を覗きこむ・・・先程まで満々と水を湛えていたはずなのに・・・」
「アァ~ん・・気持ち良くなっちゃう」
「諦めきれず岩肌を探っていると、何処からともなく芳しい香りの水が滲み出てくる。その甘く芳しい水で咽喉を潤して休憩する」
「ウッ、ウゥ~・・もっとぉ・・・」
「休憩を終えたオレは複雑な岩肌に足を掛け、手で岩を掴んで登り始める・・・ヨイショ、ヨイショ・・」
「イヤァ~・・上手よ、気持ちいぃ・・」
「途中の岩の出っ張りに苦労する・・・オーバーハングっていうのかな??」
「クリトリスにそんな事・・・気持ち良くなっちゃうよぉ」
「やっとの思いで登りきったオレの前には草原が広がっている。やっと芽生えたばかりのような緑の草がそこかしこに生えている・・・草の匂いに気を惹かれ乍らもオレは先を急ぐ・・・」
「それもいぃ、恥毛をツンツンされるのも気持ち良いよ・・・もう一度したくなっちゃう」
「ようやく草原を抜け出ると目の前に広がる広野。ツルツルの草も生えていない広野。オレは大地を転げまわる・・・」
「くすぐったい・・」
「コロコロ・・・コロコロ・・・あっ、湖の跡なのか窪みに転がり落ちてしまう」
「よく落ちるね・・・あっ、お臍を弄らないでくれる。お腹が痛くなっちゃうから・・」
「窪みを這い出たオレが遠くを見ると真っ白な山が二つある。あの山に登れば助けを求められるかも・・・勇気百倍、歩き始める」
2本の指は臍から乳房に向かい歩き続ける。

「辿り着いた白いツルツル山。登るには手掛かりがなさすぎる。裾野を歩き登る場所を探す・・・反対側になだらかで登りやすそうな場所を見つけた・・・目印を付けておこう。アラッ、ペンもなければ何も持っていない手ぶら。腰にもブラブラする物を持っているけどね」
「しばらく役立たずのくせに・・・」
「あれっ、傷つくなぁ・・・そうだ、目印を付けるには・・・」
「ふふふっ・・・キスマークが目印かぁ。しっかり付けといたほうが良いよ」
「数日は消えるはずがない目印を付けたオレは、迷子の心配もなくなり頂上を目指す」
「後であなたにも目印を付けようかな、彩が迷子にならないように・・・」
「なだらかな山を登り頂上に着いたオレを迎えてくれたのは天辺に聳える桃色の岩。思わず頬ずりし、漂流するオレを迎えてくれた彩島に感謝のキスをする・・・」
「うっううぅ~・・気持ちいぃ・・・」
「見渡す限りの大海原、助けを呼ぶ相手はいそうもない。もう1つの山にも同様の挨拶を済ませ、なおも先へ進む」
「助けてくれる人はいないのか・・・」
「行き着いた先に迎えるものは断崖絶壁」
「首から顎じゃしょうがないね、どうすんの??」
「横へ回り込むと何本ものツタがある。そのツタを頼りに登る」
「痛い、髪の毛を引っ張ると痛いよ。あっ、でも助かるためだから我慢する」
「登りきったオレはあちこちに足を取られながら歩き続ける・・・」
「いやぁん、耳を弄ると気持ちいいよ・・・そこは目。うっ、鼻を弄んないでよ・・」
「目的地に辿り着いたオレはようやくキスをする・・・」

「キスしたいの??・・・よく頑張ったからしても良いよ」
「オレは愛する彩の唇に挨拶をする」
「あぁ~・・・もっと、言って」
「彩の唇も身体も、勿論、心もオレだけのもの」
「ほんとに??・・・嬉しい。迷子にならないようにギュッと抱きしめて・・・」
「彩は、ほんとに可愛いよ・・・チョイと早いけど、誕生日おめでとう」

                      <<おしまい>>

クリスマス

「あっ・・・すみません、降ります」
文庫本から目を上げて窓外を見るとオレの降りる駅の風景があった。
網棚のバッグを掴み大急ぎで出口に向かう。
反対側からも急ぎ足の女性が出口に向かっており、ぶつかりそうになる。
「お先にどうぞ・・・」
「ありがとう・・・」

ホームの階段を上がり橋上駅舎の改札口を出る。
駅舎を出てペデストリアンデッキに立つと、クリスマスを間近に控えた夜の風景がそこにある。通りの街路樹や幾つかのビルはイルミネーションがきらびやかに飾り、コートの襟を立てて帰りを急ぐ人、待ち合わせの時刻を確かめるために時計に見入る人や夜の歓楽街へ向かう人たちに交じって、周りの風景に溶け込むことなく所在無げに佇む人もいる。
時刻を確かめたオレは読みかけの文庫本を読み終えてから帰ることにしてコーヒーショップに向かう。
ショップに入ろうとすると、反対側から歩いてきた女性とぶつかりそうになる。
「どうぞ・・・」
「えっ、また、ありがとう・・・」
「えっ、ああ~、電車の・・・」

女性は店内に入るとオーダーする様子もなくオレに視線を向けて、
「私にはカフェモカをお願い・・・」
そう告げると席を求め、さっさと奥へ歩いて行く。
オレの前を横切る時、仄かな香りが鼻腔をくすぐり抗議することも忘れたオレは黙って見送りオーダーカウンターへ向かう。

ホイップクリームをトッピングしたカフェモカとホットチョコのトールサイズをトレイに載せて女性が座る席に向かう。
女性の脇で立ち止まると、隣の椅子を引き、さも当然のように、どうぞ・・・と、隣席を指さして笑みを浮かべる。
カフェモカを女性の前に置き、ホットチョコを手に持ったオレは、
「ありがとう」と、間の抜けた言葉を返してしまう。
「好い香りですね・・」
「ブルガリのクリスタリンよ、お気に入りの香水なの」
「ふ~ん・・・」
女性に興味を惹かれ乍らも馴れ馴れしくするのは失礼だと思ったオレは、バッグから取り出した文庫本の続きを読もうとする。
「どんな本読んでるの??」
「なで肩の狐」
「花村萬月ね、萬月の暴力派それともセックス派??」
「どちらでもなく、ロマンチック派」
「不良派ではなく萬月のロマンチック派かぁ~」
「そう、夢追い人・・・」

「家で待っている人はいる??」
「いれば、さっさと帰るよ」
「そう・・・私を食事に誘う気ある??」
「このあと食事に行きませんか??」
「ほんとっ・・・でも嫌な女でしょう・・・」
「いや、好い女だもん。我がままや少々の強引さは許される・・・」
「ウフフッ、ありがとう・・・あなたの思う好い女の条件は??」
「この季節、ポインセチアやシクラメンの鉢植えを贈られる人かな・・」
「ねぇ、突っ張って生きている私を壊してくれる・・・」

見つめるオレの視線にたじろぎもせず、粘っこく視線を絡ませる女性から視線を外し、
「もしもし、今晩、部屋ありますか??ダブルで・・・はい、それでお願いします・・・30分後くらいです・・・」

ケータイを2人の間に置いたオレは、女性に声を掛ける。
「取り消すならリダイヤル・・・食事はホテルで」
「うぅうん、取り消す必要はないわ・・私をどう変えてくれる??」
「好い女から可愛い女へ・・・」
「そう、お願ぃ・・・あなたのクリスマスの予定は??」
「予定か・・・予定は当然ある」
「それは残念、仕方ないわね・・・」
「好い女から可愛い女に変身した女性とクリスマス・イルミネーションの下を歩く・・・」
「それって・・・もしかして??」
「クリスマスはオレと過ごしてもらえますか??」
「喜んで、こちらこそよろしくお願いします」

「よかった、ところで名前を教えてくれる・・・シクラメンの鉢植えを贈りたいから」
「私は彩、季節はずれの砂浜で貴男を待っていた彩」

                     <<おしまい>>

彩―隠し事

会員制クラブ  

「鍬田君のアイデアで設計変更したから受注できたよ。ご苦労さんだったね・・・それにしても見積価格を上げて機能追加、よく考えたなぁ」
「会話の中で見積りへの反応よりも性能への関心が高いと思ったので進言しただけで偶然です」
「謙遜するところが鍬田君らしいな。出世欲をギラギラさせる男も若い頃の私を見るようで嫌いじゃないが、鍬田君の奥ゆかしさも好きだな。欲のないのが女性だからと言う理由なら残念だけど」

ご主人に申し訳ないから、あえて祝杯のために誘うのは止めとくけど本当にありがとうと言ってくれた課長の言葉を思い出すと苦笑いが浮かぶ。
ご主人かぁ・・・私たちほど幸せな夫婦が他にいるだろうかと最後に思ったのはいつだっただろう。
あの日を最後に夫と呼ぶ人を信じられなくなった。


先に帰宅した私が夕食の準備も終わる頃に帰ってきた夫がテーブルに並ぶ料理を見て、
「ワインが欲しいな、日曜日に飲み干しちゃったろ。買ってくるよ」
放り投げたバッグからこぼれそうになった書類を戻そうとしたとき、それを見つけてしまった。
<<土曜日、いつものところで待っています。奥さんよりも10倍、愛しています>>
目の前が真っ白になるという表現が実際にあると、その時はじめて知った。
内心の動揺を隠してワインを味わう余裕もなく時間の経過の遅いのを呪いながら食事を終えた私は、今日は体調が悪いから別室で寝ると告げた。
顔色が悪く如何にも体調が悪く見えるようで私の言葉に疑念を抱くことのない夫は後片付けをしてくれて、いつもの優しさを見せてくれたものの、それまでのことも全て嘘に思えて許すことが出来なかった。

翌日は真っすぐ帰宅する気にもならず、同僚を誘っていかがわしさの漂う盛り場へ向かった。
「ねぇ、優子は浮気したことある??」
「急にどうしたの、あるわけないよ」
友人の問いかけに夫の不倫を知って憤然と答えたのが懐かしい。
「私は一度だけ・・・一度って相手が一人っていう意味だけどね」
「長い間だったの??」
「半年くらいかなぁ。遊び慣れている人で、夫とは行くことのないような所に連れて行ってくれたし、セックスも考えたこともない場所や方法でしたけど、そんなことに慣れていく自分が怖くて別れたの・・・その彼が連れて行ってくれた店の一つが近くにあるの、行ってみようか」

会員制と書かれたドアが中から開き、友人の背後に隠れるようにして恐る恐る二重扉の中に入ると照明が暗いうえに衝立や植木が邪魔になって店内の様子がはっきりと見えない。
ピシッ・・・ヒィッ~、痛いっ・・・俯いちゃだめだ、お客様に可愛い顔をよく見てもらいなさい・・・ウグッ、グゥッ~・・・
悲鳴の聞こえた方向に向かって目を細めるとスッポトライトに照らされた下着姿の女性が壁に鎖で繋がれて鞭で打たれている。
予期せぬことに驚いて身体は動かず、呆けたように立ち尽くしていると友人が、
「何してるの??こっちだよ」
雲の上を歩いているようなフワフワした感じで案内された席に着き、ようやく照明に慣れた目を彼方此方巡らすと、中央には得体のしれない椅子が鎮座して壁には鞭や縄が下がり十字架まで設えられ、客は男性が圧倒的に多く女性客は男性に連れられたカップルがほとんどだが優子たちのように女性連れがもう一組いる。

再び鞭打たれていた女性に視線を向けると真っ赤なローソクを見せつけられて、ハァハァッと息を荒げている。
優子・・・優子・・・えっ、なに??・・・どうしたの、ボーッとしてと言う友人の声で我に返る。

下着を外すことなく万歳の格好で拘束されて鞭打たれ、蝋を垂らされて身体を赤い模様で覆ったところで拍手と共にショーは終わった。
しばらくすると男性一人と思っていた隣の席に女性が一人案内されてきた。
「どうだった、昂奮しただろう??声が裏返って目が逝っちゃってるように見えたぞ。濡れてるか??」
「イヤンッ、恥ずかしいから触んないで・・・すごいよ、昂奮する。知らない人に見られながら鞭打たれるんだよ。もっと打って、どうにでもしてって言いたくなるのを我慢するのが大変だった」
「そうか、よかったな」
「今夜は寝かせないよ。生殺し状態なんだからね。鞭打つ人の股間が膨れてくるのを見るとドキドキして、入れて、ぶっといオチンポで啼かせてって叫びそうになったんだから」

友人の話ではAV女優さんや飛び入りのお客さん、前もって予約したお客さんを相手に縛りなどSMショーが連日あるらしい。
初めて現実に見るSMショー、ボンテージ衣装や妖艶なランジェリー姿のホステスさんの話も興味深く、足早に通り過ぎる時間を恨めしく思いながら帰路に就いた。

普段の私を知る人は清楚で貞淑な奥様と言ってくれる。
仕事をする私を知る人は今日の課長のように過分すぎるくらいに評価してくれる。
夫さえ気付いていない本当の私は胸の内にドロドロした性的な欲求を抱えている女で、遠い記憶の中に初めてそれを意識した瞬間がある。
そんな事を考えながら今日の仕事のご褒美を自分に与えようと、友人に連れられて過去に一度だけ行ったことのある会員制の店に足を向ける。
あの日、帰る私に行ってくれた言葉が蘇る。
「次回はお客様が会員となってビジターのお客様と同伴でも、あるいはお一人でもお迎えいたします。秘密保持のためにあえて会員カードは発行しておりません。会員様のお顔は決して忘れることがございませんが、仮名で結構ですからお名前をお聞かせください」
仮名でも良いという事なので、鍬田優子と本名は名乗らず“彩”と覚えてくださいと伝えた。

優子は会員制クラブの重い扉の前に立って監視カメラを真っすぐ見つめる。


                                                <<< 続く >>>

彩―隠し事

性癖  

人見知りする質で自分から能動的に動くことは少ないけれど何かの拍子でスイッチが入ると自分でも驚くほどの行動力を見せることがあり、仕事ぶりを課長に褒められた今日はそのスイッチが入った。

「いらっしゃいませ、彩さん。今日はお一人ですか??」
「はい。次回は私一人でも会員として迎えて頂けると聞いたので来ました」
「ありがとうございます。どうぞ、お入りください・・・この者がご案内いたします」
彩と仮名で登録した優子がドアの前に立つと待たされることなく、カマーバンドと蝶ネクタイを着けた黒タキシード姿の男が招き入れてくれた。
脇から裾までメッシュになったレザーのミニドレス姿で背中の中ほどまでの黒髪と切れ長の目が印象的な女性に案内された席に着く。

友人に連れられて初めて来た時よりも落ち着いているものの店内の様子や内装が気になり、彼方此方見回すのを邪魔することなく優子を値踏みするようなホステスさんの視線が熱い。
フルートグラスに注がれたキールロワイヤルが届くと、
「乾杯しようか・・・お姉さんは私のタイプ。あっ、私はカヲル。好物は可愛い女性」
えっ・・・予期せぬ成り行きで一瞬、頭の中は真っ白になり手に持ったフルートグラスをテーブルに戻す。
「脅かしちゃった??ごめんね。お客様に合わせてMにもSにもなるけど、お姉さんはMでしょう??そんな匂いがする」
「そんな事を・・・突然、言われても・・・ハァハァッ・・・」
不快と思わないものの秘めた思いを見透かされたようで息をするのが苦しくなり、自然と息が荒くなって口が開いてしまう。
「隣に座ってもいい??」
優子の返事も聞かずに身体を寄せて左手で太腿をサワサワと撫で、ミニワンピがずり上がって黒い下着がチラチラ見えても気にする様子もない。
乾杯しようよ・・・フルートグラスを持つ手は震え、カヲルの言葉に抗うことも出来ずに催眠術にかかったかのように意のまま操られる。

可愛い・・・微笑と共に一言囁き、優子の持つフルートグラスを引き寄せてキールロワイヤルを口に含み、何も言わずに唇を重ねて流し込む。
ゴクッ・・・それほどアルコール度数が高いはずもないのに喉を通過すると火傷しそうなほど熱く身体が燃える。
いやっ・・・重ねられたままの唇が優子の嚥下したことを確かめると妖しく蠢き始め、同性の柔らかい唇と舌の動きに翻弄されて全身がカァッ~と熱くなる。
ウグッ、アンッアウッ・・・舌を吸われてなすすべなくカヲルの技巧に喘ぎ声を漏らすと乳房を揉まれて全身の力が抜けていく。
「ウフフッ、感度がいいね・・・ねぇ、名前を聞いてもいい??」
「えっ、そうね・・・彩。彩と呼んで」
「彩。名前も可愛いね・・・彩りのアヤでしょう??・・・華やかに変化するって意味もあるよね。清楚で上品な彩が奔放で淫らな女に変化する。名は体を表す・・・彩、いい名前だよ」
「いや、初めて会ったカヲルさんにそんな事を言われるのは恥ずかしい」
「恥ずかしい・・・そうね。でも、気持ちに正直にならないと彩の求める世界に入ることはできないよ」

「ヒィッ~、いやぁ~ン、そんな事をされたら狂ってしまう・・・逝く、逝っちゃう、いいの、ダメェ~」
カヲルの行為に驚くばかりでSMショーを見る余裕もなかった彩は女性の悦びの声でステージに視線を向ける。
ショーツ1枚だけ残して乳房を剥き出しの女性が後ろ手に縛られて縄尻を天井から下がる鎖に繋がれ、男性と女性の二人にバイブ責めされている。
豊満な乳房は上下を這う縄が大きさを強調し、左右の乳首はクリップが挟んで錘が垂れ下がっている。
女は手に持つバイブで執拗に股間を責め、男は縛られた女を所かまわずバイブを這わせて思うさま嬲る。
二人に責められる快感で身悶えると乳房の先端からぶら下がる錘が揺れて苦痛に変わり、顔を歪めるのがなんとも艶っぽい。

「本当に逝っちゃいそうだね。足指や手の指の動きを見てごらん。快感を隠しきれないよね、唇を噛んで切ない表情で堪えているでしょう??あんなエロっぽい表情を見ると苛めたくなっちゃう・・・彩を啼かせてみたい」
カヲルの指が首筋から耳の裏を撫で、顔を近付けて息を吹きかけながら囁く。
ヒィッ~・・・どうしたの??・・・私を啼かせたいなんて急に言うんだもん。
暗くて分かりにくいものの彩の顔は朱に染まり、動悸が激しくなって息をするのが辛い。

ヒィッ~、逝く、ダメダメッ、クゥッ~、逝っちゃウゥッ~・・・ひと際長く尾を引く喘ぎ声と共にがっくりと頭を垂れた女は鎖に繋がる縄に体重を預けてぐったりとなる。
縛られたままの女を労わるように抱きかかえた男は鎖から降ろして髪を撫でて何か話しかけている。
「あの二人はご夫婦なの。来るといつもご主人と女王様の二人で奥様を責めてあげるんだよ。私も参加したことがあるけど、見ず知らずの他人の前でご主人に責めてもらう時間に幸せを感じるんだって・・・」

ハァハァッ・・・ゴクッ・・・後ろ手に縛られたまま、男の腕の中でぐったりする女から視線を外すことも出来ずに唾を飲む彩にカヲルは声をかける。
「彩、どうしたの、大丈夫??苦しそうね・・・上着を脱ごうか、楽になるよ」
仕事帰りでパンツスーツ姿の彩に声をかけ、上着を脱がせてパンツまで脱がそうとする。
ステージを見つめたまま、意思を無くしたかのようにカヲルの行為に異を唱えることもできず、スーツの上下を脱がされて唇を奪われる。
それで終わるはずもなくキスをしたまま乳房を揉まれてブラウスのボタンを外され、気が付くと下着姿にされてしまった。
「えっ、いや。こんなところで、恥ずかしい」
「大丈夫よ、まわりを見てごらん。この席は衝立や壁で見えないようになっているでしょう??・・・私に任せなさい。本当の彩の姿を見せてあげる。独りで来た理由があるんでしょう??正直になりなさい」
淫靡な欲求を湛えた瞳でカヲルを見つめる彩は操られたようにコクンと頷いてしまう。

「行くわよ。みんなに見られながら縛ってあげる」
「ハァハァッ~、顔を隠してくれる??全てを見られるのは恥ずかしいの」
「大丈夫、私を信じなさい。誰にもばれないようにしてあげる・・・」

彩―隠し事

秘めた想い

下着姿で衆目にさらされ、戸籍上のご主人と女王様の二人に責められて身悶える女性を見ている優子は、遠い昔から心の奥に秘めていた淫靡な思いが育ち始めるのを感じる。
カヲルはそんな優子の心の奥を見透かしたようにキスをしながら乳房を揉みしだき、逃げ場のない悦楽が支配する世界に追い込んでいく。
カヲルの誘いに易々と応じて席を立ち、導かれるまま縛られる準備をするためにバックヤードに向かう。

夫が浮気をしたから私はここにいる。
ここにいる私は優子ではなく彩。
悪いのは私ではなく夫、優子ではない彩が秘めた想いを叶えてくれるかもしれないと思うと全身の血が騒めき始める。
優子と彩の身体は同じ、彩の感じる快感が私である優子を満足させてくれることを期待して女の部分が熱を持ち、疼きが身体だけではなく心も刺激して昂奮が止まらない。

案内されたバックヤードはホステスたちのロッカーが並び、香水など表現するのも難しいほど艶めかしく色っぽい匂いが漂う。
「すぐに戻るから待っていて」と、言い置いたカヲルは彩を残して部屋を出る。
一人になって遠慮なく部屋を見回すとバイブや脱ぎ捨てられた下着が転がっていたりと性的な解放感が溢れていて、心臓が破裂しそうなほど昂奮している自分が馬鹿々々しく思える。
言葉通り、すぐに戻ってきたカヲルは持ってきた紙袋をテーブルに置き、
「ステージの準備はもうすぐできる。時間が経つと怖くなるから直ぐにやっちゃおうよ・・・汚れたり裂けたりすると困るからスッポンポンになって袋の中のモノに着替えてくれる・・・着替えながら聞いてね・・・」
カヲルの説明は、店のルールとして責める側と責められる人との事前の約束厳守。ブラジャーは外してもいいけど、たとえ誰であれ股間は見せない。下着の上から指や道具で愛撫するのは可能。鞭やローソク、オモチャ責めは前もって取り決めを行う・・・説明を終えたカヲルは彩の意思を確認して希望を確かめ、このウィッグとアイマスクを着ければ出来上がりと彩の退路を断ってしまう。

見ず知らずの人たちの前で縛られて羞恥責めされる姿を想像すると身体の火照りを止められない。
前開きのワンピースとブラジャー、ショーツが彩の身体を守り、前を歩くカヲルの背中が夫の浮気相手に重なって見える。
「彩、緊張するなって言ってもダメだから、あえて言わない。深呼吸して・・・」

「今日、二人目のショーを始めます。小柄ですが要所要所に程よくムッチリ感があり如何にも縄が似合う白い肌が自慢の女性です・・・」

カヲルに背中を押されてステージに向かう彩の息は荒くなり、一歩一歩進んでいるものの両足はフワフワとして自分のものとは思えない。
真っ暗な客席は目を細めても何も見えず、カヲルに此処でいいよと言われて立ち止まると両足の震えが止まらずに崩れ落ちそうになる。
「あらあら、どうしたの??嬉しくて足の震えが止まらないの??スケベな女だねぇ・・・落ち着くように縛ってあげようか」
縄を手にしたカヲルは客席に背を向けて彩の正面に立ち、二人だけが分かるように小声で話しかける。
「マスクとウィッグで誰だか分からないから安心して。ドキドキしてるんでしょう??目を閉じて深呼吸してごらん」
話しかけながら両手首を縛り、再び彩の背後に戻ったカヲルはワンピース越しに乳房を揉み、ウッと驚きの声を漏らすと身体のラインを確かめるように手の平が全身を撫でる。
「お客様は、このスケベな身体を見たいと思っている。私は見せてやりたいと思っている、あなたは見られたいと思っている・・・そうでしょう??」

彩がコクンと頷くと客はゴクッと唾を飲み、ザワザワしていた店内が一瞬の静寂に包まれる。
背中越しの手がワンピースのボタンを一つまた一つと外すと手首を縛られた両手で胸を隠そうとする。
「フフフッ、手首を縛られただけじゃ満足できないんだね。罰を与えてくださいって言う催促だよね」
先ほどまで二人の男女に責められていた女性が吊られていたフックに手首を吊り上げられると満足と期待で店内が騒めき、彩が思う以上にその身体は客たちの性的好奇心を刺激する。

二つ外されたワンピースのボタンは新たに一つ外され、ブラジャーと白い肌の一部が露わになる。
ヒッ、ヒィッ~・・・縛られた両手を吊り上げられていては胸を隠すことも叶わず、客席に背中を向けて胸を隠そうとするとワンピースの裾を捲り上げられる。
ヒィッ、いやぁ~ン・・・オゥッ~・・・ワンピースの防備を無くしてTバックショーツが存在を誇らしげに示す美しい尻とムッチリとした太腿が露わになると歓声が上がる。

客席のどよめきに背を向ける彩はカヲルに正対して無防備になり、あっと思う間もなくすべてのボタンを外される。
覚悟していたこととはいえ見ず知らずの人たちが暗闇の向こうで好色な瞳を見開いていると思うと、渦巻く全身の血がドクドクと音を立てて逆巻き、立っているのさえ苦しくなる。
カヲルはワンピースを開き切り、
「皆さんにエロイ身体を見てもらおうね。自慢の身体をワンピースで隠すのは勿体ない・・・さぁ、見てもらうのよ、嬉しいでしょう」
「ハァハァッ・・・いや、はずかしい・・・」
嫌という声は裏返り、彩自身も本当に嫌なのか、それとも見られたいと思っているのか自分の気持ちが分からない。
ボタンをすべて外したワンピースを背中でまとめたカヲルは、彩の身体を客席に向ける。