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不倫 ~immorality~

再会―1

前日の雨で緑が一段と濃くなった木々に囲まれたスーパーの駐車場に一台の車が入ってくる。
夕方なので買い物客も多く駐車場にスペースを見つけると大胆に、しかし繊細に操られた車は見事に停車する。一連の動きに夫婦と思えるカップルは感嘆の視線を向けている。
夕日が西の空をオレンジ色に染める景色に頬を緩めたジーンズにトレーナー姿の女が車から降り立ち、自然な動きで乱れ髪に手櫛を入れて整える。小柄ながらも肌理の細かい色白の肌と整えられたばかりの黒髪が男の視線を釘付けにする。
女は自分に向けられる視線に気付いていないのか、それとも気にしないのか、ゆっくりと店に向かって歩き始める。
残されたのは、男の視線を快く思わない女が連れの男に向ける怒りの言葉と嫉妬交じりの視線。
「貴方の好みは、あの女性のような人なの??私じゃ満足できないんだ・・・」
「なに言ってんだよ、どっかで見たことのある人だなぁと思って・・・勘違いだったよ。さぁ、帰ろう・・・」

後姿が凛として美しく、全身の筋肉がバランス良く動いて躍動感を感じさせる。
150cm位の小柄な身体は、背筋と腹筋が美しく調和して姿勢が良いこともあって実際よりも大きく見せ、腰の位置が高く膝下を伸ばして歩く姿は自然と他人の視線を引き付ける。
後姿に見惚れた男は急いで追い越し、自然を装って振り向き顔を覗き見る。
意志の強さを感じさせる顎のラインは、物柔らかな瞳と口元によって理知的に見えることはあってもきつい印象を与える事はない。
ゆっくりと店内を巡りながらも逡巡する様子はなく、予め欲しい商品を決めてあったのか、それともイメージした献立に必要な食材を求めているのか選択に迷いなく買い物を済ませて車に戻る。
駐車場に入ってきたときと同様、決して広くはない駐車場での運転や道路に出る際の動きに戸惑う様子はなく、運動神経の良さを感じさせる。

マンションに戻った女は、静かで冷たい空気が漂う部屋に入る。
買い物袋をテーブルに置いて、フゥッ~と息を吐き、何かを感じて自室を見る。
丁度その時、スマホが着信を知らせてくれる。
「もしもし・・・あなた??どうしたの??・・・・・そう、今日は帰れないの??遅くまで残業だからホテルに泊まるの??うん分かった。それじゃぁね・・・・・」
スマホを見つめる女は、一瞬の悲しさを表情に宿してウソツキと吐き捨てる。

確かな証拠があるわけではないが浮気の兆候を感じ始めた頃、残業で遅くなったという夫のポケットにラブホの領収書を発見し確信した。
夫との出会いが脳裏をよぎる。人見知りと共に他人の思いを斟酌しすぎる女にとって、目の前に現れた男は愛を語るのも不器用で直接的であり、それまでの男たちとは違う男らしさに満ちていると感じさせた。
甘い夫婦生活の時間は、いつの間にか記憶の中にだけ存在するようになり、今では気に入らない事があると居丈高に居直るようになってしまった。
休日に何かと言い訳めいた言葉を口にしながら出掛けたり、メールを気にしている様子が見えたり、二人でいる時にスマホに出るのを躊躇ったりの回数も増えて、最近では諦めに似た気持ちになっている。

電話のせいで独り分の食事を作るのも面倒になり、翌朝の分として用意したパンなどで済ませることにする。
トレーに載せた夕食を持って自室に入り、ビールを一口飲みPCを起動してブログを開く。
今では、このブログが寂しさを癒す手段の一つになり、見知らぬ人との会話が楽しみになっている。
夫とは疎遠になりつつあり、職場の仲間や親しい友人には話しにくい事も、見知らぬ人にならブログの中で相談めいた事も言える。
何処に住んで、どんな顔をしているのかも分からない者同士が旧知の仲のように話す安心感で、時にはエッチな写真をアップしたりもする。
エッチな気分になった時、リビングなどで窓から差し込む陽光に肌を晒して独り密かに撮影するのは、心の奥底に潜む卑猥な隠し事を発散出来るという事で一石二鳥と言える。
清潔感のあるムッチリボディーにそそられます、などと言うコメントは、夫と距離が出来つつある現在、自分を見失うことなく自信を持って生きる自信になる。

ブログのコメント欄を見た女の目が驚きで大きく開き、マウスを持つ右手が震えを帯びる。
<彩さんの、くびれたウェストから腰や尻を経て太腿に至るムッチリ感にドキドキします。可能なら、ミロで語り合う時間を持ちたいです・・・健>
胸の高鳴りが止まらない。唇が乾く・・・喉の渇きを癒すためにビールを口に含む。

お茶の水駅の近く、狭い路地裏の喫茶店・・・・<純喫茶ミロ>
今もあるかな・・・ナポリタンの味が懐かしい・・・
ジュリアナ東京やトゥーリアの華やかさはないけれど、彩と健の青春があった・・・
間違いない、健だ・・・心が騒ぐ・・・
学生時代、何度か肌を重ねた相手、将来を誓った訳ではないけれど2人の将来に何の不安も感じることはなかった。
あの日、電話の向こうの健の声は今でもはっきり覚えている・・・
「彩、オレ達はもう会えない・・・」
「・・・・・・・」理由を聞く気にもならず、受話器を置いた。

心を鎮めるために、用意した夕食を努めてゆっくり口に運び、それでも治まらない動悸を鎮めるために、ヨガマットを敷いて無心にヨガをする。
ようやく平静を取り戻し、胸が痛くなるほど湧き上がっていた怒りも冷めたので、コーヒーを淹れて机に戻る。
書かれたメールアドレスを睨んで何度も迷った挙句、目を閉じて送信する。

<人違いじゃなさそうだけど、どういう積り??・・・・・彩>
直ぐに返信が届いた。
<人違いじゃなくて良かった。不快な思いをさせたと思うけど許して欲しい。改めて連絡します・・・健>
何もする気にならず,何も手につかないまま火曜日の夜は更けていき、ベッドに入って眠れぬ時間を悶々と過ごす内、指が自然と股間に伸びる。
こんな時にと思いながらも身体は刺激を求め、知らず知らずの内に喘ぎ声を漏らしてしまう。
ウッウッ、アァァ~ン・・・自分の漏らす秘めやかで甘い声が気分を盛り上げる。
目を閉じて股間に伸ばした指を蠢かしても、絶えて久しい夫の顔は浮かばず、恨みに思う事はあっても二度と会いたいと思わなかった健の顔が蘇る。
今更どうして・・・・・

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ジャンル : アダルト

不倫 ~immorality~

再会―2

いつの間にか睡魔に襲われたらしくカーテン越しに水曜日の陽の光を浴びて目覚めた彩は、目を眇めて時計を見る。
タイマーをセットした時刻より早く目覚めた事に安堵し、大きく伸びをしてPCに目をやって怪訝な表情になる。
どういう積もりなんだろう??昔、別れの言葉を突然電話で伝えた事の侘びなら今更言う必要はないはずだし聞きたいとも思わない。
もしや・・・まさか・・・爽快感に包まれた目覚めとは言い難いものの、新たな何かが生まれそうな予感に心が沸き立つ。
夫との関係に距離を感じているだけに新しい出会いを欲しいと思うものの、仕事に追われる日々と人見知りをする質でもあり、悶々とした日々を送っていたが沸々と大きくなる期待が指を股間に向かわせる。
アンッ、いやっ、気持ち良くなっちゃう・・・クチュクチュ、ニュルニュル・・・いつにもまして性的な感度が良くなっている身体は、昨晩に続き簡単に昇り詰めてしまう。

シャァッ~・・・身体を叩くお湯が心地良い。その刺激が心の奥底で澱のように存在する記憶を蘇らせる。
「彩・・・目覚めた時、指先に触れる肌の感触に幸せだなぁって思うよ」
「起きたときだけ??・・・寝る前は??」
「オレに背中を見せて横向きで寝る彩を後ろから抱いて、腿の間に手を入れる。ムッチリあんよの感触が大好きだよ・・・いつまでも、このままで居たい」
健との想い出は楽しかったがゆえに、電話での別れの言葉に空しさと儚さを感じ、ぶつける先のない不条理に思い悩む日々を過ごした。
健に抱かれた記憶が蘇る。対面座位で貫かれたまま唇を合わせ、背中と尻に回した手で身体を支えられて、ベッドのスプリングを利用して下から突き上げられる。
イヤァ~ん、ハァハァッ・・・記憶の中で漏らしたはずの声がバスルームに反響し、思わず漏らした喘ぎ声で我に返ると指が股間に伸びていた。
アッ、アンッ、だめっ・・・指先が湿り気を感じ、ぬかるみに吸い込まれそうになる・・・健に会いたい、胸の奥に沈殿する怒りをぶつけたい。
出勤時刻の近付いた事を思い出し、温度を下げたシャワーで身体の火照りを冷まして股間のぬめりも洗い流す。

<改めて連絡します・・・健>
短い文面の最後の言葉が気になり仕事が手につかない。普段の彩なら間違えるはずのない過ちを犯しては、熱でもあるんじゃないの??どっか悪くない??と、同僚に体調を気遣われる始末の一日を過ごしてしまった。

前日、残業で遅くなるからと言って、帰って来なかった夫の事は気にならない。いつもは、どんな女性を抱いているのかと思うと、苛立ちと諦めで気分が滅入っていたが、健の連絡を期待して自然と頬が緩む。
理由もなく別れの言葉を告げられた恨みをどう伝えようか・・・ブログには結婚したと書いてあるのを承知の言葉とすれば、健は今でも独身なのだろうか、それとも離婚して独り身なのだろうか??
コメント欄に健の名前を見た時の戸惑いや怒りは、今や中身の伴わない漠とした期待に変化している。

マンションのエントランスで一回り以上年上ながら仲の良い住人夫婦に会う。
「こんにちは。お二人でお出かけですか??」
「お帰りなさい、彩さん。・・・そうじゃないの、サラリーマン時代は仕事、仕事で私の事はお手伝いさんと間違えているんじゃないかと思っていたけど、定年になった途端、買い物に行く私についてきたり、台所に立てば台所に、風呂の掃除を始めればそばに立って見ていたりと、金魚のウンチみたいな人になっちゃったのよ」
「おいおい、金魚のウンチは酷いな・・・」
「今まで、威張っていた反動で私に捨てられるんじゃないかと心配なんだと思うよ・・・下着が何処にあるかどころか、お茶も淹れられない自分に愕然としたんじゃないの??」
「う~ン・・・まぁ、それに近い感情はあるけどな・・・早く行かないと、スーパーが閉まっちゃうよ」
「これだからね・・・あなた、スーパーは23時までやっていますよ・・・彩さん、それじゃぁネ」
寄り添って歩く二人を見送る彩の表情に羨ましそうな感情が浮かぶ。
言葉とは裏腹に、互いを信頼し尊敬しあっている様子が見て取れる。これまでも、そしてこれからも、それは途切れたり薄まったりする事なく、益々深くなっていくのだろう。
それに比べて彩の人生は、何処で間違えたんだろう??

チン・・・エレベーターに乗り込んだ途端、ご夫婦の事は記憶の中に押しやって昨日は帰って来なかった夫にどう接するか、その事だけを考える。
結論は、いつもと同じ、知らぬ振りをして厄介な問題は先送りする事にする。
もしかすると・・・浮気をしているはずの夫と同じ事を・・・僅かだった期待が、大きく育ち始める。
メールを確認したいのを我慢して夕食の準備をしていると夫から連絡が入り、一時間ほどで帰ると言う。浮気を悪いと思う気持ちが残っているようで、そんな時は不自然に優しい言葉を口にする。

夕食の準備を終えたので、見たいのを我慢していたメールを開く。
あった。健からのメールが届いていた。
<今どこに住んでいるかは聞かない。今週土曜日12:00ミロで待っている。。。健>
唐突な話にもかかわらず腹が立たない。
期待していた内容に近い事に安堵し、夫にこの事をどう切り出したものか、そればかりが気にかかる。

「ただいま・・・いやぁ、昨日は参ったよ。急な仕事で部下が間違えちゃって、ほっとくわけにも行かないから事後の処理に付き合って、結局はホテル泊まりの羽目に・・・本当にごめんね」
今日は、嘘で固めた言い訳を聞いても腹が立たない。いつ、土曜日の件を切り出そうか、そればかりが気になる。
「やっぱり、急な泊まりで怒ってる??・・・何にも言ってくれないんだもん。悪かったよ、ごめん」
これ以上、相手にしないと逆切れするのは分かっている。潮時と見て口を開く。
「しょうがないよ。仕事だもん・・・彩も仕事をしているから分かるよ」
「そうか、そうだよな・・・仕事を理解してくれる嫁さんを持ってありがたいよ」
「うん・・・・・」
「どうした??・・・何か気になる事があるの??」
言い訳のためと思っても、優しい言葉に心が騒ぐ。
「あのネ、ダメだって言われたら、諦めるけど・・・今度の土曜日なんだけど学生時代の仲好グループで会おうって誘いがあったんだけど、行ってもいい??」

テーマ : 18禁・官能小説
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不倫 ~immorality~

再会―3

食事を終え、後片付けを始めた彩に近付いた夫が背中越しに抱きしめて生暖かい息を首と耳に吹きかけられた感触が残っている。
いつの頃からか、どちらともなく寝室を別にする事を望み、食事の時間以外は言葉を交わす事もなくなっているが、セックスの悦びを思い出した身体は吹きかけられた息に反応しそうになった。
ベッドに入って独りになった今、夫の愛撫とも言えない刺激で悦びそうになった事を思い出しただけで悔しさが募る。

「良いよ、行ってきなよ。場所は??・・・泊まりなの??久しぶりだから楽しみだろう??・・・俺も土曜日に上司からゴルフを誘われて、どうしようか迷っていたんだけど、彩が出かけるなら行ってこようかな」
白々しい事を・・・女と出かけるに違いない。そう思っても、いつもと違ってイライラする事がない。
夫の出かけるという言葉で浮気を想像し、彩も昔の男に抱かれるかもしれないと思うと股間が熱くなる。
健に会いたい・・・怒りをぶつけた後は昔のように胸に包み込まれて髪を撫でて欲しい。身体を這い回る手の平の感触が蘇る。

ミロは同じ場所にあった。20年という時間を上手に過ごし、歴史を感じさせる古ぼけた雰囲気が往時を懐かしく想い出させてくれる。
「ナポリタンとコーヒーを下さい」
用意していた健への恨み事は胸の奥深くに留めた彩は健を見つめる。
「来てくれないと思っていた・・・ありがとう」昔と変わらない健の声。
無言で見つめる彩の視線に堪え切れないのか、テーブルに視線を落として気弱な声で話しかける。
「・・・で、どうするの、健が止めた時計。動かすのも止めたままにするのも健次第・・」

「おまちどうさま」想い出のメニュー、ナポリタンとコーヒーが運ばれてきた。
「食べ終わるまでに決めてよ・・・」
彩は状況を楽しんでいた。

幸せだった生活も今は砂を噛むような味気なさで、以前は愛していたはずの夫を前にして笑顔を見せる事を忘れていた。
人に言えない性癖もブログを通じてそれなりに楽しみ、素敵だ可愛いと褒められる事はあっても所詮は手の届かない相手、満たされない思いも残る。

今は目の前にいる獲物をどう料理しようか、懐かしさと共に蘇る恨み事をどう伝えようかと考えると自然と頬が緩む。
普段は想い出す事もなく暮らしていたけれど、目の前に存在する健を意識すると記憶の奥に眠っていた楽しかった想い出が次々と蘇ってくる。
突然、健が口を開く。
「彩、ホテルを取ってあるんだけど・・・」
「頭おかしいんじゃないの・・・知っているでしょう、彩は人妻だよ・・・」
「そうか、そうだよな。ごめん」
「健はどうなの??結婚しているんでしょう??」
「20年前、彩に最後の電話をした前日の夜・・・スナックのママから子供が出来たって言われた」
「その人が奥さんなの??」
「そう、ごめんね・・・」
「誤ることないよ。健は今幸せ??彩は幸せだよ」
「オレも幸せだよ、もちろん」
「今は何をしているの??」
「5年前に勤めを辞めて、今はディトレーダーとして生活してる」
「ふ~ん、儲かる??」
「将来の不安がない程度には・・・」
「どうして勤めを辞めたの??」
彩の中のもう一人の彩が、怒りを忘れて質問を繰り返す。

20年の時間を埋めようと焦り、矢継ぎ早に質問を繰り返す事に、ぎこちなさを感じた二人は店を出て中央線の線路沿いに水道橋駅の方向に歩き始める。
坂を下りきり白山通りにぶつかる頃には、ぎこちなさが消えて自然と身体を寄せ合い、偶然、前から来る男性とぶつかりそうになった彩を庇った健の手が彩の手を握る。
「ウフフッ・・・昔を思い出す。この辺りをよく歩いたよね。神保町交差点近くの洋菓子屋さんの白水堂でマロングラッセを買って錦華公園のベンチに座って話したり、後楽園遊園地に行ったり・・・クククッ、ジェットコースターに乗ろうか??」
「怒るよ・・・高いところや怖いものは嫌いなのを知ってるだろう」
「彩は絶叫マシーンが好きなのに・・・あの頃は、彩のためならって我慢して付き合ってくれたのに・・・人妻になった彩には興味がないの??」
ゴォォッ~・・・後楽園の脇を歩き始めた二人の頭上を、轟音を残してコースターが走り去る。
突然立ち止まった健は、頭上のコースターを見上げる彩を抱きしめて拒否する暇も与えずに唇を重ねる。
「ウンッ、ウグッ・・・ウッウゥゥ~・・・だめ、もっと・・・ハァハァ・・・ハァハァッ、突然でびっくりした。いやだっ、あの子が彩たちを見ている」
母親に手を引かれた男の子が二人を指差して何やら母親に話しかけている。

何処に行こうと目的地を話すことはなくとも二人の足は、懐かしい小石川植物園に向かう。
20年前、歩き疲れた二人を癒してくれた植物園は、今も変わらず周りの喧騒を知らぬ気に静かに迎えてくれる。

生い茂る木々が作る緑陰を歩き、池の淵に差し掛かると仲の良いカモの夫婦が寄り添うように泳いでいる。
当時と同じ場所にソテツを見る頃には、2人の空白の時間は埋まり、彩は屈託のない笑顔で健を見上げ、健の瞳には昔と変わらず愛おしい彩が映る。
二人を見つめる太陽から隠そうとするかのように、大きな枝を広げたメタセコイアの樹の下でキスを交わすと20年間のわだかまりは霧散し、身体が相手を求めて疼く。

「彩、神田駅のガード下を覚えてる??」
錦華公園のある駿河台下から靖国通り、本郷通りを経て神田駅まで歩いていくと、ガード下に“神田アカデミー劇場”の看板があった。扇情的なピンク映画の看板に吸い込まれるように中に入り、扉ではなく厚いカーテンを捲って中に入る。
薄汚くガラガラの館内の一番後ろに進んで目を慣らし、この場所に似つかわしくない広さも十分にある豪華なリクライニングチェアーに座った。
「どうしたの急に・・・憶えてるよ、健の手がジーンズの中に潜り込んで・・・バカッ、これから先は忘れた・・・あの映画館は、まだあるの??」
「この間、通ったけど、なくなってたよ」
「そうなんだ・・・無くなったんだ・・・」

テーマ : 18禁・官能小説
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不倫 ~immorality~

再会―4

20年間、記憶の片隅にあった映画館のシーンがおぼろげに蘇る。
「アッアッ、ウゥゥッ~・・・気持ちいぃ~、もっと、吸って、強く・・・」
人妻が訪れたセールスマンに抱かれるという、ありふれたストーリー、こんな事が実際にあるのだろうかと思いながらも、スクリーンから目を離す事が出来ない。
女優の身体は女の彩から見ても垂涎もので、学生の彩のプリプリした乳房とは違い熟しきったそれは、触れなば落ちん風情で男を誘う。
スクリーンを通じて見る彩にも、たわわな乳房は男の手の中でずっしりと重量を感じさせ、彩の二倍はありそうな乳輪も色素沈着は薄く男が気を惹かれるだろうと言うことは想像できる。
ゴクッ・・・思わず唾を飲んだ彩は、健に視線を向ける。
「なんか、エロイね・・・男の人に揉まれ続けると、あんなオッパイになっちゃうのかなぁ??」
「クククッ・・・いずれ、彩のオッパイもズッシリで乳輪も大きく育つ・・・オレは嫌だな。清潔な彩が好いよ」
「考えてみると、揉まれると大きくなるわけじゃないよね・・・見て、興奮して乳房に青筋が浮かんで、大きな乳輪が勃起したように突き出てきた・・・すごいね、エロすぎる」

健の左手が彩の腿に伸びる。
エッ、いやっ・・・腿をまさぐる健の手を包み込むように押さえた彩は、抵抗とも言えないような抗いを見せながら、そっと顔を盗み見る。
健の顔はスクリーンに向けられたままセックスシーンに見入り、表情からは彩の腿を愛撫しようとしているようには見えない。
押さえつけられた左手に力を込めてジーンズのファスナーを引き下ろそうとする健に対し、日頃スポーツに興じている彩が両手で抗っているとはいえ、男の力に敵うはずもなく侵入を許してしまう。
ファスナーを下ろされてボタンを外され、下着が見える事よりも周囲の視線が気になる彩は、ガラガラの館内で二人に注意を払う者がいないことを確かめて大胆に振る舞い始める。

健の股間に伸ばした彩の右手は、ズボンの上から膨らみを探して上下に擦り息を荒くする。
「すごい、大きくなってる・・・直接、触って欲しいの??・・・ダメ、ここでは我慢しなさい」
映画館で卑猥な事をしていると言う興奮を隠そうとしている学生の彩は、精一杯余裕ありげに振る舞おうとする。
我慢が限界に達した健は、ひじ掛けの存在を無視して彩に覆いかぶさり左手に変えて右手を股間に這わせる。
水平近くまで倒れるのではないかと思えるほどリクライニングシートは傾斜を深くし、ギシギシッと不快な音を立てる。

「いやぁ~ン、そんな・・・ヒィィ~、奥まで来てる・・・もっと、突いて、主人のチンポより感じちゃう・・・」
椅子のきしみ音はスクリーンの中のセックスシーンの声にかき消されて他人の注意を引くことはなかった。
彩の抵抗をかいくぐってジーンズに忍び込んだ指は下着越しに割れ目を上下し、トレーナーをまくり上げて剥き出しになったブラジャーを押しのけた指は乳首を摘まむ。
若い二人はセックスの経験も浅く、興奮を鎮める方法も知らずに本能のままに振る舞い続ける。
「痛いっ、ブラジャーが・・・見てない??誰にも見られてない??」
周囲を窺い、見られていないことを確かめた健は、右手を背中に回してブラジャーのホックを器用に外して乳房を剥き出しにする。
場面が変わったスクリーンが突然明るくなり、白く輝く彩の乳房が健の目に輝きを放つ。
「いやっ、見えちゃう・・・ダメッ、見えちゃう、隠すの・・・」
彩の右手は覆いかぶさる健の身体の下で自由にならず、トレーナーを下ろそうとした左手は手首を掴まれて自由を奪われ、抗いの言葉を吐く唇はキスによって抵抗する事を拒絶させられる。
抵抗する左手から力の抜けたことを感じ取った健の右手は手首から離れて、腰から尻を撫でながら前に回って下着の中に忍び入る。
「彩、恥ずかしいくらい濡れてるよ。聞こえるかい??」
大陰唇と小陰唇を割って泥濘に届いた指はクチュクチュと音を立てて蠢き、彩は、より強い刺激を求めて股間を指に押し付ける。
「アンッ、いやっ・・・こんな所で・・・気持ち良くなっちゃう、良いの??気持ち良くなっても良いの??」
「エッチな彩をみんなが見てるよ。作り物の映画より彩の痴態の方が興奮するって・・・いやらしい彩を見てるよ」
「ウソでしょう・・・ウソだよね。ウッウッ、クゥゥ~・・・気持ちいいの」
快感を押し殺した彩の声が健の耳をくすぐる。
「スケベな彩、エッチな彩・・・いやらしいよ、彩がこんなにエッチだとは思わなかったよ」
「いやっ、そんなことを言わないで・・・彩のことを嫌いにならないでね・・・ウックゥゥッ~・・・」
我を忘れた彩が漏らす喘ぎ声を恐れた健は、唇を合わせて声の洩れるのを防ごうとする。
彩は、声を漏らす事もできない切なさで静かに快感を高めていく。
キスをしたまま髪を撫でられ、うなじから耳へと這う指の動きに身体の芯がゾクゾクと震える。

バサッ・・・突然、スクリーンからではない明かりが館内を照らす。人の表情が見えるほど明るくはないけれど、新しい客がカーテンを捲り上げてスクリーンに目をやっているのが見える。
彩は外れたブラジャーをそのままにしてトレーナーを下ろし、健は彩の下半身に手をやって下着ごとジーンズを引き上げる。
館内の前方を見ていた男は、視線を後方に巡らして二人の一列前に席を取る。
二人の行為に気付いた様子も見せない男が座るのを待って、健は彩を見つめて胸を撫で、安心したよと声を出さずに口を動かす。
ニコッと微笑んだ彩は、トレーナーの中に両手を入れてブラジャーのホックを填めてジーンズと下着を正す。
健は身を乗り出して彩の耳に口を近付けて、
「出ようか??・・・彩は我慢できる??オレは我慢できないよ」
「ウフフッ、彩も我慢できない」

「あの時の彩はすごかったよ・・・神田駅近くのビジネスホテルに入ると、シャワーを使う時間も惜しむようにオレを押し倒して、ズボンを脱がせて・・・潔癖症のはずの彩が汗臭いオレのものに、むしゃぶりついてきた。あの時の感触は20年経った今でも覚えてるよ・・・ウッ、立ってきた。分かりやすく言うと、勃起」
「どれどれ・・・うそっ、ほんとだ、大きくなってる」
「彩は、我慢できる??・・・申し訳ないけど、オレは我慢できない」
「ダメだって、今の彩は人妻だからね・・・」
「そうか、そうだよな・・・」

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不倫 ~immorality~

再会―5

一瞬とはいえ、健の目的が彩の身体なのかと思うと20年の時間を埋めて打ち解けたはずの雰囲気が気まずいものになる。
「ごめん、来てくれないと思っていた彩に会えたので調子に乗っちゃった・・・本当にごめん・・・後楽園でジェットコースターに乗ろうか??」
「クククッ・・・今はね、後楽園遊園地じゃなく、東京ドームシティって言うんだよ・・・それに、無理しなくていいよ」
気まずい雰囲気にしたことを後悔する健は努めて明るく振る舞おうとするが、それが余計に居心地の悪い空気を作る。

小石川植物を出て当てもなく歩く二人の間に微妙な距離ができ、その距離を縮める方法も分からず黙々と歩く。
20年ぶりに身体を開くことを夢見ながらも、いざとなると踏ん切りのつかない自分を訝しく思う彩は意を決する。
「ミロでナポリタンを食べてから時間も経ったし、お腹が空いちゃった・・・」
「少し早いけど、夜景を見ながらの食事ってどうかな??夜景のきれいな・・・いや、何でもない・・・」
「ウフフッ・・・夜景のきれいなホテルを予約してあるの??」
「うん・・・・・ごめん」
「変な意味じゃなく、予約してあるホテルがどんなだか確かめたいな・・・彩への評価が分かるような気がするから・・・そのホテルで食事しようか??」
「わかった・・・ごめんね」
「あのね、何度も謝んないでくれる・・・謝られると惨めになる。健が彩に対して下心があって、それを拒否する度に小出しに条件を出されているようで嫌なの」
「・・・・・分かった」

関係が遠のくと記憶も薄れ、遠ざかっていた記憶が鮮明なものになると関係も旧に戻る。
そう思うものの、20年の時を埋めるのは容易なことではなく、焦れば焦るほど
新たな取り返しのつかない溝ができそうになる。
居心地の悪さから逃れようとする健は、心ならずも生まれた溝を埋めようとして、おずおずと手を伸ばす。
忍びやかに伸びた指先が彩の手に触れる。
再び二人の距離が縮まり、些細な行き違いで遠ざかることを恐れる彩は健の指を握る。
健は手に力を込めて握り返し、二人は顔を見合わせることなく握り合う手の温もりで20年の時を埋めていく。
春日通りを空車のタクシーが走り去るのを見ながら飯田橋駅を目指して二人は歩く。タクシーでホテルに向かうのが便利で早いのは分かっていても、今のこの時間を変化させることに恐れを抱く。
手を離した彩は偶然を装い、健の腕を抱きかかえるようにして身体を濃密に密着させて乳房を押し付ける。
ゴホンッ・・・健は腕に押し付けられた乳房の感触で、20年前と違い大人の女性に変化した彩を感じると同時に動悸が早くなるのを感じて、わざとらしく咳払いをする。

飯田橋駅で総武線に乗り、市ヶ谷駅近くの釣堀が見えると彩が指差して、
「覚えてる??市ヶ谷フィッシュセンター・・・全然、釣れなかったよね」
「そうだったっけ??」
「彩が怒った振りをしたら・・・クククッ、健は金魚を買ってきて・・・クククッ、釣れた、釣れたって大騒ぎ。金魚を持って帰ったんだよ」
「そうだった、そんなことがあったね。釣れないのは、オレのせいだって言うから金魚を買ったんだ・・・」
ドアガラスに身体を寄せて釣堀を指さす彩と重なるようにして外を見る健は、互いの体温を感じるほど頬を近付けてキスとは違う興奮をしているはずなのに、やっと居場所を見つけたような落ち着きを感じる。

四谷駅で降りて上智大学を見ながらホテルに向かう。
都心にありながら緑豊かなホテルは宿泊や食事だけではなく愛を語らう散策にも向いている。
手をつないだまま歩いてメインエントランスから館内に入った健は声をかける。
「どうする??・・・食事にする??それともバーに行く??」
「う~ン・・・なんか疲れちゃった。予約してあるんでしょう??部屋で休憩したい」
「エッ・・・・・じゃぁ、フロントに行かなきゃ」

チェックインを済ませた健は、ベルボーイの案内を断りエレベーターホールに向かう。
エレベーターに同乗する人はなく、二人きりになった途端、彩はしなだれかかる。
「今更だけど、彩、泊まっても良いの??」
「嫌なことを聞かないで・・・彩をその気にさせるのが健の腕でしょう??キスして・・・」
小柄な彩は、健の胸に寄り添いながら潤んだ瞳で見上げて目を閉じる。
そっと唇を合わせた健は、
「楽しみは、後に取っとかないと・・・」
チン・・・「バカッ、彩がキスして欲しいって言ってるのに・・・恥をかかせないでよ・・・」そう言う、彩の顔には笑みが浮かぶ。
健が知っている彩の笑顔があった。

物音一つしない廊下を進み、部屋に入った途端、健は彩を壁に押し付けて唇を奪う。
20年前の感触を思い出すように一瞬の内に濃厚なキスをして、いったん離れ、彩の顔を覗き込んで、可愛いよ、会いたかった・・・目を真っ赤に染めた健が囁く。
「彩も会いたかった・・・20年間ずっとこの日を待っていたような気がする・・・抱いて・・・健の好きなように彩を可愛がって・・・」
ついばむように唇をつつき、離れてはくっつき、くっついては離れるという事を繰り返しながら唾液を交換するような濃厚なキスに変化する。
「ハァハァッ・・・だめ、もうダメ、立っていられない」
彩を抱きかかえてベッドに運び、投げるように寝かせる。
「イヤンッ・・・優しくしてくんなきゃ嫌っ・・・キスしてくれたら、許してあげる」
笑みを湛えて目を閉じる彩の額にチュッと唇を合わせた健は、カーテンを全開にして窓いっぱいの景色を目で示す。
「彩も可愛いけど、この景色もいいな・・・目移りしちゃうよ」
六本木ヒルズなど六本木、赤坂から東の方角に高層ビルが立ち並び、正面の奥には東京タワーが見える。
「すごい・・・きれい・・・でも、彩がこの景色に負けるのは嫌だな。健には彩が一番でなきゃ嫌だ」
「う~ん・・・六本木ヒルズや東京タワーに負けないほど魅力的な彩になる方法があるよ・・・」
「どうすればいいの??」
淫蕩な期待で頬が紅潮し、自然と声が上擦る。

テーマ : 18禁・官能小説
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